2017年02月03日
コラム
以前、CINRA.NETにクラムボン・ミトさんとJust ear開発責任者 松尾の記事を掲載いただきました。
Just earをご利用・ご検討されている方々に向けて、記事中のキーワードを深掘りするコラムをご用意いたしました。
松尾のコメントとともに、4回にわたりお送りいたします。
※本件はCINRA.NET様のご理解とご協力をいただき、記事を抜粋させていただいております。
第1回目となる今回は、フラットな音について。
オーディオにこだわるミュージシャン、クラムボンのベーシスト・ミトさん。「音のプロ」であるミトさんは、やがてプロのサウンドエンジニアが言う、「フラットな音」を追求するようになったとのこと。
音作りに関わるエンジニア達が心がけていることは、まず「フラットな音であること」でした。
————————(以下記事抜粋)————————
松尾:まず前提として、ミトさんのようなミュージシャンの方を筆頭に、音を作る人はいろんな環境で音源が再生されることを想定するんですよ。どんな環境で楽曲が再生されるかはユーザー次第なので。
—ミトさんのように、ケーブルひとつにもこだわったオーディオシステムで聴く人もいれば、手軽にスマホで聴く人もいる。
松尾:はい。その際に、ひとつ基準となる音を目指して作っておけば、どんな環境で聴いたとしても再生音の振れ幅は、想定範囲内に収まるんです。なので、「フラットな音」=「クセのない状態の音」と言い換えると分かりやすいかも知れませんね。クセは聴く人の環境によってのみ発生するものにしたい。最初からクセのある音を作ってしまうと、個人が聴く際にさらにクセの幅が広がってしまいますからね。
—その「フラットな音」を再現する性能というのが、われわれがユーザーとして使用するヘッドホンやイヤホンのひとつの指針になるわけですね?
松尾:性能上の指針になりますね。フラットな音を追求するヘッドホンを作る場合に大切にしなければならないのが、音楽制作者が出したいほんのちょっとの細かいニュアンスを再現できるかどうか。以前、ソニー・ミュージックの乃木坂スタジオのレコーディングエンジニアと一緒にソニーのインイヤーヘッドホンを開発した時は、自分が意図したリバーブのかかり方になっているかどうかが聴き分けられないとダメだと言われました。
ミト:はい、分かります分かります。
松尾:ボーカリストの方の口元とマイクの距離感の違いを再現できるかどうかも大切です。作り手の意図する違いをちゃんと再現する性能は大事ですね。
————————(以上)————————
「フラットな音」に関する記事の紹介でした。ここで、取材を受けての松尾からのコメントを掲載いたします。
ソニーで担当してきたモニター用途のヘッドホン、インイヤーヘッドホンの開発を通じて、音楽制作者が注意している部分はどこか、それを再現するために押さえておくべきポイントはどこか、というのを理解することが出来ました。
その中で学んだ大事な要素の一つとして、製造過程による音質のバラつきが挙げられます。素材そのものが持つ強度や質量のバラつきや、部品同士の組み付け方によって生じる細かな差が、再生音にも影響を与えます。音楽制作者がシビアに音作りをしていく中では、こういった音質のバラつきを許容することができないことがあります。
ソニーでは、音響構造の工夫と使用する素材の使いこなし、製造工程の管理と検査方法の確立等、多面的な方法でこういったバラつきを減らす工夫をしています。
Just earの設計、製造においてもこのノウハウをフルに活用しています。Just earは個別に生産される製品であり、使用者本人にしかその音質を判断することができませんが、だからこそ基本となる音質を担保したいと考えています。
また、Just earで目指す音はここでいう「フラットな音」とは違ったアプローチをしています。一人ひとりのためにつくる製品だからこそ、使用者にとってベストな音を目指すことを心掛けています。
本文中で言及している音の「クセ」は、音楽をより楽しいものにするためには活用できることも多く、Just earではこの「クセ」を味方につけて、楽曲に合わせて必要な「クセ」の度合いを調整します。
そのためにも「フラットな音」を理解し、またそれを実現することができる基本構造が必要となるのです。
以上、column vol.1 -フラットな音- でした。
次回はJust earの特徴のひとつ、「独自の耳型採取」を取り上げます。