2017年03月16日
コラム
以前、CINRA.NETにクラムボン・ミトさんとJust ear開発責任者 松尾の記事を掲載いただきました。
Just earをご利用・ご検討されている方々に向けて、記事中のキーワードを深掘りするコラムをご用意いたしました。
松尾のコメントとともに、4回にわたりお送りいたします。
※本件はCINRA.NET様のご理解とご協力をいただき、記事を抜粋させていただいております。
第3回目は、「XJE-MH1」をご希望されるお客様の多くが楽しみにされていらっしゃる、音質チューニングについて。いったい、どのようにして音を合わせるのか。ミトさんの音質チューニングの様子を見てみましょう。
——(以下記事抜粋)——
松尾:では次にオリジナルのシミュレーションソフトを使って、音質の好みを伺って調整します。まだ新しい耳型は完成していないので、お客様にはこちらで用意した「Just ear」、同時に私も自分の「Just ear」を使って、一緒に曲を聴きながらチューニングを。調整用の音源は、お客様がふだんよく聴かれるものをご用意いただきます。今日は、まずはミトさんがいちばん音を知っていらっしゃるクラムボンさんの楽曲を使わせていただきますね。まずは"呼び声"をスタンダードな音質で流してみます。
松尾:では次は、意図的にベースの量感を出した音を聴いてください。
ミト:うん、これもいいですね。
松尾:といった具合に、低域を徐々に上げていったり、高域の鳴り方をナチュラルにしたり、もっとパキッとさせたりなど、いろいろなパターンを想定して音質を変化させていきます。その中で、お客様が「もうちょっとこうだと気持ちがいい、聴きやすい」という要望を反映させた、その方の好みの音を製品に反映します。
ミト:完成したイヤホンでも、同じようにリファレンスを行うんですよね? おそらく自分の耳の形に合ったイヤホンを使えば、それに応じてロー感などもまた変わってくると思うんです。今のユニバーサルな状態でも、思った以上に音の密度が濃いというのはすごく実感できますから、私はこれだけでも不満はないですよ。「Just ear」は、2種類のドライバーを組み合わせているからでしょうか、すごく音が音を包んでいる感覚がある。普通はベースの音域を上げると、真ん中に配置されているメインボーカルの音が潰れたり、後ろのほうに沈んだりするんですが、これは音像が崩れるストレスがない。囁き系のボーカルでも、ちゃんと引き立つようにロー域が寄り添って聴こえるのは、ベーシストとしてもありがたいです。やっぱり僕は歌が好きで音楽をやっているので、ベースはきちんと歌を引き立たせるものであってほしいんですよ。
—音に立体感があるということですか?
ミト:そう、あまり今まで感じたことのない奥行き感があるんですよ。とくにリバーブの奥行き。リバーブは残響音なので、本来、生で聴くと遠くから聴き手に迫ってきて、反響する音であるはずなんです。でも、今みなさんが音源で感じるリバーブは、バッと広がって音が大きくなるイメージ。音の出所からの距離を感じるべきなのに、そう聴こえないエフェクトになっていることが多いです。それが、「Just ear」で聴くとちゃんと距離感がある。なぜそう聴こえるかというと、音の密度が高いので、音像に余裕があるからなんですよね。
松尾:はい、そこはエンジニアのこだわりですね。低音の出し方も、音圧を無理に上げるのではなく、音を鳴らす振動板を大きくすることで、音量を上げてもナチュラルな低音を引き出せる構造にしています。
ミト:だから、すごくライブ感を味わえる。音像に余裕のある感じが本当に衝撃的です。今までいくつも高級と呼ばれるイヤモニを使ってきましたけど、確実に、他にはないスペックを感じました。この衝撃は、実際に体験してみないと分からないと思うので、みなさんにも1度でいいから試聴してもらいたいですよ。
——(以上)——
お客様一人一人と向き合い・寄り添う、Just earの音質チューニング。
その工程では、お客様とともに、私たちも音楽を楽しませていただいています。今回は、この工程で松尾が感じている・心がけていることをお伝えします。
Just earのビジネスがスタートして、もうすぐ2年になろうとしています。振り返ると、本当にたくさんの方々に向けてXJE-MH1の音質調整を対応させて頂きました。
お客様との対面でのヒアリングの際には、手帳にお客様の要望や試聴を通じて気付いた点、お客様と交わした会話等をメモに取っています。たまにその手帳を振り返るのですが、当時は初めて伺ったアーティストの名前が、今ではよく知った方のお名前だったりすることがあります。思えば、私自身もこの2年間を通じて、お客様から多くのことを教わったのだなと気付かされます。
XJE-MH1の取り組みは、メーカーとしてはかなり挑戦的なものでした。客観的な立場でみた場合、この取り組みは顧客満足度を上げるための「サービス」と捉えられるのではないかと思いますが、結果的には設計者の知見を広める上で非常に有効な「開発業務」であったのだと感じています。
結果的に、それがメーカーとお客様双方のメリットになったのだとすると、今後のメーカーとお客様との関係性を考える上で大きなヒントになるのではないでしょうか。
以上、column vol.3 -音質チューニング- でした。
次回は最終回、Just earがお客様に約束し続ける「音、装着感」について。
最後まで、どうぞお楽しみください。