報道資料
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2022年11月17日
希少な細胞を迅速に特定、従来の基礎的な解析から機械学習を用いた高度な解析まで可能
ソニーは、免疫学やがんなどの研究領域において、基礎研究や疾患の原因解明、医薬品開発などに活用されているフローサイトメーター(自動細胞解析装置)で得られたデータに対して、多種多様な細胞集団の中からがん細胞や幹細胞などの希少な細胞を迅速に特定できる、フローサイトメトリーデータ解析クラウドソリューション「SFA - Life Sciences Cloud Platform (ライフサイエンシズ クラウド プラットフォーム)」の提供を開始します。
ソリューション名 | 提供開始予定時期 |
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フローサイトメトリーデータ解析クラウドソリューション 「SFA - Life Sciences Cloud Platform」* |
2022年度中 |
「SFA - Life Sciences Cloud Platform」は、散乱光や蛍光の強度の差異などから特定の細胞集団だけを選び出して解析や定量を行うゲーティングなどの従来の解析手法から、多次元情報に対して二次元での俯瞰を可能とする次元削減や、細胞集団の自動分類を行うクラスタリングなどの高度な解析手法まで、クラウド上で手軽に実行できるソリューションです。
44色以上※2の超多色細胞解析を実現するソニーのスペクトル型セルアナライザーの最上位機種『ID7000』に対応しており、出力した生データや、『ID7000』の付属ソフトウェア「ID7000 Software」の解析結果のフォーマットを変換する必要なく、そのまま取り込んで解析することができます。また、データ間の類似度に応じてデータをグループ分けするクラスタリングの手法の一つであるFlowSOMを高速化した新規開発のアルゴリズムBL-FlowSOM※3を搭載しています。さらに、各アルゴリズムはクラウド環境上にプリインストールされているためすぐに解析を行えるほか、データや解析結果のユーザー間での管理と共有が可能です。
フローサイトメーターとは、特定の条件下で発光する薬品(蛍光試薬)で染色した細胞にレーザー光を照射し、発された光(散乱光や蛍光)を検出することで、細胞の特性を解析する装置です。この解析手法はフローサイトメトリーと呼ばれており、1秒間に数万個におよぶ多種多様な細胞の大きさや個数、細胞の表面や内部の情報(構造、機能、バイオマーカー等)を測定することができます。ソニーのフローサイトメーターは、既に世界の1,000以上の研究機関をはじめ、製薬会社、バイオテック企業などで使われていますが、研究の進歩に伴い、さまざまな細胞情報を一度で網羅的に取得できる『ID7000』のような機器のニーズが高まっており、こうした機器から得られた、多色かつ膨大なデータの細胞情報を手早く処理するために、次元削減やクラスタリングなどの高度な解析手法も発達しています。
「SFA - Life Sciences Cloud Platform」は、こうした研究現場のニーズと、『ID7000』などの先進的なフローサイトメーターを提供してきた知見をもとに開発を行った、ソニー初のライフサイエンス向けのクラウドソリューションです。『ID7000』から得られたデータをそのまま取り込み、自由度の高い従来の解析手法と、高速で多くのデータを扱うことのできるアルゴリズムを活用した解析手法の双方を効率的に使うことができ、さまざまな研究者が手軽かつ迅速により深い洞察を得られるようサポートします。
様々な解析アルゴリズムを使うことができるため、細胞集団の特定や多次元情報の俯瞰を素早く、客観性を担保した形で行えます。いずれもクラウド上で行われるため、ワークステーションの処理能力に左右されず、安定した速度で解析を行えます。
多次元データの構造を、できる限り重要な情報を保持したまま低次元に変換する次元削減アルゴリズムである、UMAP(Uniform Manifold Approximation and Projection)とFIt-SNE (Fast Fourier transform-accelerated Interpolation-based t-SNE)が使用可能です。データの特徴把握がしやすくなり、『ID7000』から出力された多色のデータをすぐに俯瞰することができます。
フローサイトメトリーのデータクラスタリングの手法の一つであるFlowSOMを元に、解析の高速化と解析結果の再現性の向上を実現した新規開発のアルゴリズムBL-FlowSOMを搭載しています。また、BL-FlowSOMの結果に対して、細かなクラスタを細胞の特性ごとに大まかに集団化したメタクラスタの編集や、クラスタ・メタクラスタ双方に対して抗原がどれだけ発現しているかを示すヒートマップ解析といった、補助的な機能が使用可能です。
フローサイトメーターでの測定時の送液の乱れなどによって発生するデータのノイズを自動的に検出し、除去するアルゴリズム(flowAI、flowCut、flowClean、PeacoQC (Peak-based selection of high quality cytometry data))が使用可能です。次元削減やクラスタリングの前に実行でき、より客観性を担保した解析結果を導きます。
細胞情報を二つのパラメーターの散布図とする二次元プロット、各波長域ごとの蛍光の生データとなるスペクトルプロット、多次元情報を二次元で俯瞰することができる次元削減プロット、クラスタリング後のデータを表すMST (Minimal Spanning Tree)プロットなど、各種解析を行った後の全てのプロットを画面上で連携させて操作することができます。例えば、従来できなかった二次元プロットと次元削減プロットとの対比が一細胞ごとに行えるなど、効率的な解析を行えます。
ヒストグラムや二次元プロットの解析の際、特定の軸の範囲や対数表示の設定を行うスケーリングのほか、ゲーティングなど、『ID7000』の付属ソフトウェア「ID7000 Software」と同様の基本解析機能をクラウド上で行うことができます。アルゴリズムを用いた高度な解析手法と組み合わせることができ、より深い洞察を得られるようサポートします。
『ID7000』から出力されたデータファイルをそのまま取り込んで解析することができます。各種アルゴリズムによる解析を行う際に、フローサイトメトリーで用いられる標準規格のデータフォーマットであるFCSファイルなどへの変換の必要がなく、解析したワークシート情報をそのまま導入することができます。その上、各蛍光シグナルの強度情報の変換前のスペクトルデータも含めて『ID7000』から移行することができるため、生データに立ち返り、分析を見直すことができます。
UMAPやFIt-SNE、BL-FlowSOMなどの各アルゴリズムは、クラウド環境上でプリインストールされた状態のため、プラグインとして追加する必要はありません。さまざまな習熟度のユーザーでもすぐに様々な解析アルゴリズムを使うことができます。
『ID7000』から得られたデータや、各種解析を行った後のデータをクラウド上に保存することができるため、データ自体の管理や、共同で研究を行っているユーザーとのワークステーション間でのデータ共有を手軽に行うことができます。各ユーザーが「スペース」という管理単位の下に、プロジェクト単位で実験データの共同解析場所を設けることができ、そこにアクセスできるユーザーを管理することができます。実験データの共有や公開範囲の管理ができるため、ユーザー間で連携して研究を進めることが容易になります。