
©Yuka on Safari α7 III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS, ISO400, F8, 1/2500s
Vol.5
2025年3月24日
サファリガイドが伝える、
人と自然と動物の共生
南アフリカ政府公認サファリガイド
太田 ゆか
環境をテーマに活動しているクリエイターたちとともに、地球環境を考えるインタビューシリーズ。今回登場するのは南アフリカ政府公認サファリガイドの太田ゆかさんです。南アフリカのサバンナは生命の営みがそのまま露わになる地であり、地球環境が抱える問題をリアルに体感する場所。太田さんは、この地を舞台にサファリツアーと野生動物の保護活動に取り組み、自然と動物だけでなく人間を含めた生態系の関係性について発信し続けています。太田さんがソニーのカメラとレンズを通して捉えるいまが映し出す、地球の未来のために私たちができること。

太田 ゆかおおた ゆか
南アフリカ政府公認サファリガイド
日本人女性初の南アフリカ政府公認サファリガイド。立教大学観光学部在学中に、南アフリカのサファリガイド訓練学校に入学。現地の資格を取得後、2016年からグレータークルーガー国立公園にてガイドとして活動。現地でも取得が難しいとされるトレイルガイドの資格や、全9州のカルチャーガイドの資格も取得。ガイドの傍ら、「罠にかかった野生動物の救助」「密猟からサイを守るためのプロジェクト」「人間と野生動物の軋轢を防ぐためのGPS活用」など野生動物の保護活動にも取り組み、現地の生態系保全を目指す。サバンナの魅力と現状を広く伝えようと、現地の情報をPodcastやYouTube、SNSから発信。NHKやTBS『クレイジージャーニー』などにも出演。著書「サバンナで野生動物を守る」(講談社)、「私の職場はサバンナです!」(河出書房・2024年度課題図書に選出)を出版。2025年度版中学校教科書にも掲載される。
人と動物が営む暮らしを守りたい

サイの親子。サバンナでは動物たちとの距離が近い。
©Yuka on Safari α7 III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS, ISO400, F5.6, 1/320s
太田さんがサファリガイドを目指すようになったきっかけを教えてください。
物心がついた頃、気づいたら動物が大好きになっていました。その過程には、幼少時代に自然の中で遊んでいた影響もあるのかもしれません。オタマジャクシをカエルになるまで、イモムシが蝶になるまで育てては自然にかえして。あとはペットとして飼っていた犬の病気を治してくれる獣医さんの存在も大きかったですね。動物を守る仕事イコール獣医という印象があったので、最初の夢は獣医になることでした。でも理系科目が苦手で獣医の道を諦めて、環境保護団体やNGO、ボランティアプログラムなど動物が暮らす環境を守る仕事を調べるようになりました。
その時点では、サファリガイドという将来の選択肢はなかったのですね。
そうなんです。大学時代にいろいろな国でボランティアプログラムやNGOでのアルバイトなどを経験したなかで、ボツワナ共和国に出会いました。それまでに世界各地の自然は見ていたものの、はじめて見るアフリカのサバンナの世界に「ここで絶対に働きたい、こんなすごい場所があるんだ」と感動しました。そこではじめてサファリガイドという職業についても知りました。サファリガイドはサバンナの大自然の中で動物を守りながら暮らしているのですが、それはまさに私にとって夢の職業で、「こんな風になりたい」と心から思いました。
ボツワナのサバンナではどんな衝撃を受けたのですか?
それまでに訪問したモンゴルの草原、アメリカの国立公園、オーストラリアやマレーシアのジャングルなどと比較して、ボツワナのサバンナには野生動物と人間が共存している世界があり感動しました。私は、動物王国のアフリカではサバンナで動物たちだけが暮らしていると思い込んでいましたが、実際にボツワナに行ってみるとサバンナの中に村があって、そこには柵といった隔てるものが何もなく、すぐそばに野生動物たちの生息地が広がっていました。人と野生動物が隣り合わせの暮らしを営む光景に感動して、この環境を守っていきたいという気持ちが芽生えました。動物たちはサファリカーに乗っている人間を敵とも味方とも認識していなく、興味本位でわざわざ近くを歩いたりもします。こんなに間近で動物を観察できることにも驚きましたね。これはアフリカならではの魅力だと思います。

ボツワナの雄大な平原を歩く太田さん。
©Yuka on Safari
それから夢の職業への挑戦はどうなっていくのですか?
大学3年生のときに1年間休学して、南アフリカ共和国のサファリガイドの訓練学校に入学しました。訓練の授業も試験もすべて英語でしたし、最初は英語がハードルになりました。でも、実際には資格を取った後の就職活動が一番のハードルだったんです。まず、ガイドの世界が男性中心の社会だったため女性というハードルがあり、さらに外国人としてアフリカで就職するのはものすごく難易度が高く、はじめは難航したので日本でも就職活動を行っていました。
それでも諦められなかったのは、原体験の強さが色褪せなかったから?
はい。絶対に諦めたくなかったですね。何年もボランティアガイドとして働きましたし、何かしらの方法があるはずだと信じて、なんとか現地に残ろうと必死でした。
共生している人間と動物との深刻な衝突

南アフリカで人気の動物、ダッシー。その愛くるしい姿で地元の人から観光客まで魅了している。
©Yuka on Safari α7 III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS, ISO500, F5.6, 1/500s
太田さんが実際に行っているサファリガイドの仕事について教えてください。
広大なサバンナの中には宿泊施設となるロッジが点在していて、南アフリカではほとんどのサファリガイドがそこに就職しているんです。サファリガイドはロッジの宿泊客をサバンナへ案内し、動物を観察するためのツアーを実施するのが主な仕事で、朝晩のツアーが一般的なルーティンです。私のメインのお仕事も、世界中から訪れるお客様をサバンナに案内し、動物を見つけては解説するツアーのガイドです。
ガイドは決まった場所を案内する印象があります。
いわゆるツアーガイドは各ポイントに行っては解説するというイメージがありますが、サファリガイドは自然が相手なので、まったく同じガイドになることはありません。出会える動物もその時次第ですし、遭遇した動物がいま見せている表情や行動を解説して、ツアー参加者の方々に動物たちの生命力、自然の美しさなどを感じていただくことが一番の醍醐味です。予想しきれないというのは、私が10年間も飽きない理由なのかもしれないですね。
太田さんならではのガイド方法はありますか?
私には動物を守るという夢があるので、ツアーのお客様に環境保護と動物保護について伝えることも大切な側面だと考えています。また、南アフリカで10年間暮らしていますが、サファリガイドに加えて保護活動の現場にも参加できるようにするため、環境NGOの方や獣医さんと交流を重ねてきました。今では保護活動に関わる皆さんと共同でクラウドファンディングを実施するなど、信頼関係を築くことができています。罠に引っかかった動物の目撃情報があれば、その捜索はサファリガイドの得意分野です。保護活動では対象の動物を見つけ、獣医さんと動物たちを移送する手段を手配するといった一連の活動がありますが、ここ数年でこの動物を捜索するという任務をガイドとして任せてもらえるようになりました。ただ、私のようにガイドと保護活動の両方に携わるのは特異なスタイルなんです。一般的には、サファリガイドはサファリガイドだけをやっている人がほとんどですね。

ウォーキングサファリではライフルの携帯がルール。射撃訓練は何度もしたが、幸いなことに動物が人を襲ったことはなく、
ライフルを使わない状況がずっと続くことを願っている。
©︎hugofilms
南アフリカのサバンナにおける環境保護、野生動物の保護活動では、実際にどんな問題が起きているんでしょうか。
どちらも背景が異なるさまざまな問題がありますが、私が現地で問題の根幹だと感じるのは、動物たちの生息地が無くなってきていることです。行き場を失った動物たちは、人が暮らしている集落に近づいてしまい、人間と動物が衝突して軋轢が生まれているんです。南アフリカは鉱物資源が豊かな国なので、土の下には石炭、金、ダイヤモンド、エメラルドの他、いろいろなレアメタルが埋まっています。そういったお金になるものが掘り起こされていくと、サバンナが工業地帯に変わってしまう。大きな農業プランテーションが開発されることもあり、そうするとそこで働く大勢の労働者が必要になります。一気にエリアの都市化が進み、物資を運ぶためのインフラが整備されていくと、動物の生息地がどんどん小さくなってしまうんです。居場所を失った動物たちが村にやってくることもあり、家畜を食べたり作物を荒らしたりすると、住民としては動物を処分することもやむを得ない状況です。
実際に現地で起きていることを目の当たりにしていくなかで、新たな気づきや発見も多いと思います。
通常のサファリツアーではこのような側面を観光客が目にすることはありません。だからこそ、私はガイドするときにサバンナで起きている現実の問題を意識して話すようにしており、良い面だけが映らないように心がけています。観光客はリラックスや感動体験のために来ている方たちが多いので、なかなか現状を知る構造にはなっていないんです。
太田さんは環境問題や動物の保護活動をSNSなどでも発信していますが、その上での難しさはありますか?
日本に向けて発信していると、どこか遠い国の他人ごととして映りがちだと感じています。私が活動してきたグレータークルーガー国立公園のエリアでは、サバンナの地域が開拓により無くなって、オレンジ農園に置き変わってきました。そこで生産されるオレンジの主要輸出先は中東やアジアで、日本もたくさん輸入しています。日本で日本人がそのオレンジを食べても、産地で起きていることは想像できないし、イメージできるきっかけもありません。スマートフォンにもアフリカで採れた鉱物やレアメタルが使われていますし、世界中の人たちがその消費者になっていますが、自分ごととしては捉えにくい。私が、サファリガイドとして見たこと、感じたことを発信することで、一人ひとりに身近なものとして感じてもらいたいです。

野生動物の密猟もサバンナが抱える深刻な問題だ。写真は太田さんが働いていた保護区にいたシロサイ。親が密猟者に殺され、死体の横で途方にくれていたところを捕獲された。この子サイは人間によって飼育され大人になるまで無事育ち自然に戻された。しかし、その直後にまたこの子サイ自身も密猟されてしまった。
©Yuka on Safari α7 III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS, ISO640, F5.6, 1/500s
日本人サファリガイドだからできる、南アフリカへの貢献

絶滅危惧種に指定されるリカオン。丸みを帯びた耳が特徴的。
©Yuka on Safari α7 III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS, ISO320, F5.6, 1/400s

リカオンの保護活動に参加したときの様子。絶滅の危機に瀕しているのは人間の影響も大きい。
©Yuka on Safari α7 III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS, ISO800, F5.6, 1/800s
南アフリカにおける環境問題と野生動物の保護活動の現状を伝えるという役割を通じて、世界の自然環境はどう変わっていくと感じていますか?
クルーガー国立公園のエリアでは、生息地の減少・分断によって、リカオンという絶滅危惧種が人のエリアと接触する機会が増え、絶滅しかけたんです。リカオンが移動していった先の村で犬の狂犬病がリカオンに伝染したのですが、狂犬病のワクチン接種を一気に進めたことで、また少しずつ数が復活しました。いまは絶滅危惧種でありながらも、クルーガー国立公園は世界で唯一リカオンが増えているエリアになりました。自然を破壊するのは主に人間ですが、そうやって自然や動物が抱える問題を解決できるのも人間なんですよね。動物の生命力と人間の知恵がいい形で組み合わさっていけば、自然も動物も復活していく希望があるはずです。
私たちが環境破壊や動物保護を自分ごととして捉えて、何かアクションを起こすためには、太田さんは経験から何がポイントだと思いますか?
私の場合はその想いもあってクラウドファンディングを始めました。ひとつ目はサイの保護活動のためのクラウドファンディング、ふたつ目はゾウと人が共存できるように軋轢を防ぐためのクラウドファンディングを企画して、ありがたいことに予想以上に多くの支援をいただきました。そのおかげで、ナミビアの幻のライオンといわれるデザートライオンの保護活動の資金に充てることもできました。

サイの保護活動の様子。角処置を施してサイを密猟から守る。
©Yuka on Safari α7 III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS, ISO500, F5, 1/320s

川を渡るゾウの様子。ゾウは密猟の罠にかかって怪我してしまうこともある。
©Yuka on Safari α7 III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS, ISO250, F5, 1/500s
クラウドファウンディングの支援は身近なアクションですね。
守りたい、支えたいという気持ちの表れですし、こんなに支援してくださる方がいるんだとすごく嬉しかったです。寄付金はその使われ方が見えづらいかもしれませんが、私のクラウドファンディングでは、支援のリターンとして保護活動を生配信しました。自分が寄付したお金がいつ、どこで、誰が、何のためにどう使うのかをリアルタイムで確認できるので、自分が参加していることをより実感していただきやすかったと思います。支援いただいた方たちも一緒に保護活動に取り組んでいるという自分ごとにできると思うので、こういった機会は今後もたくさんつくっていきたいですね。サファリツアーのお客様も帰国後に勤務先の社内報で環境問題を取り上げてくださったり、私がインスタグラムで紹介したサイの保護活動の写真にメッセージを添えて発信してくださったりしています。アクションの規模に関わらず各々が発信してくださることに大きな意味があると感じています。
太田さんのサファリガイドとしての活動拠点は今後も南アフリカであることは変わりませんか?
南アフリカだと思います。そうでないとしても、アフリカの大自然の中で暮らし続けることが私の夢なので、それを実現できるようにサバンナで貢献し続けていきたいです。実際に南アフリカに貢献している人材でなければビザの滞在許可は認められないですし、日本人サファリガイドとしてできることに取り組み、それが私の夢を叶えることに繋がっていけばいいですね。2024年には南アフリカで「YUKA ON SAFARI」という会社を設立したので、今年はロッジの運営とエコツーリズムの実施を目指します。日本人がクルーガーエリアでロッジをつくるのは初めてのことなので、現地の人たちに雇用を提供しながら日本人観光客が泊まれるベースをつくって、より安心できるサファリツアーを通じて南アフリカに貢献していくことがいまの目標です。

無数の星を鑑賞するナイトサファリツアー。
©Yuka on Safari α7 III, FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS, ISO4000, F5.6, 25s
サファリガイドだから撮れる写真
太田さんは何をきっかけにソニーのカメラを使うようになったのですか?
2015年からサバンナで暮らし始めたときに、父が使っていたソニーのカメラをもらいました。それをきっかけにソニーのカメラを愛用していますが、現在はα7 IIIを使っています。サバンナは急に雨が降ったり細かい砂が舞ったり、天候が変わりやすい環境です。そんな過酷な場所で使い続けても、α7 IIIはまったくトラブルがないのですごく信頼感があります。α7 IIIと一緒にナミビアの砂漠やヒマラヤにも行きました。
普段はどんな自然風景や動物を撮影していますか?
風景は太陽や星空、サバンナには114種類の哺乳類が生息しているので、出会えた動物はなんでも撮ります。ヒョウやライオンは毎日出会えるわけではないからこそ、出会えたら夢中で何度もシャッターを切ってしまいます。毎日出会うゾウやインパラにも撮りたい表情があるんですよ。あくびの瞬間、体に虫がついたときの反応、仲間同士の触れ合いとか、日々の暮らしの中で時々見せる表情をなるべく伝えていきたいです。
α7 IIIには被写体の目を瞬時に察知するリアルタイム瞳AF(オートフォーカス)機能※が付いていて、動物をスムーズに捉えられる便利さに感激しました。レンズは基本的に100-400mmの超望遠ズームレンズを使っていて、寄りも引きも撮れる便利さが頼もしいですし、100-400mmのG Masterレンズならではの高い解像性能でクロップしてもきれいな画質を保てます。自分でサファリカーの運転もしなければいけませんし、大好きな鳥を撮るシャッターチャンスがいつ訪れるかもわからないので、カメラとレンズをクイックに準備できることが大切なんです。スピードと機動力重視のサファリではやはり100-400mmがベストだと思います。
※すべての動物が対象ではありません。シーンや被写体の状態によってはうまくピントが合わない場合があります。機種や本体ソフトウェアのバージョンにより、ご利用いただける機能が異なります。対象となる機種のサポートページをご覧ください。
https://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-7M3/feature_2.html
カメラのアクセシビリティ | ソニー

多くの動物が暮らすサバンナとはいえ、ヒョウやライオンは毎日のように出会えない。
©Yuka on Safari α7 III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS, ISO1000, F5, 1/500s

インパラの頭上に乗るウシツツキ。インパラなどに寄生するダニやノミなどをエサにしている。
©Yuka on Safari α7 III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS, ISO320, F5.6, 1/500s

一番印象に残っている撮影は、はじめて見たハンティングシーン。年老いたバッファローはおそらく嗅覚も視覚も衰えていて、川辺に寝ていたライオンの家族に近づいてしまった。ライオンがハンティングモードに入る瞬間の表情の変わり方、猛ダッシュの様子など、あのときの興奮を鮮明に覚えている。
©Yuka on Safari α7 III, 100-400mm F4.5-5.6 OSS, ISO2000, F11, 1/2500s
太田さんはサファリガイド、保護活動に加えて、SNSなどでの情報発信にも精力的ですが、フォトグラファーとはまた違う何かをレンズ越しに見ているのかなと思いました。太田さんにとってカメラはどのような存在ですか?
プロのフォトグラファーではないからこそ、"サファリガイドの目線" で撮ることを意識しています。野生動物たちと同じ環境の中で毎日暮らしていると、季節の変化や、動物たちの息遣い、感情の変化をすぐそばで感じられます。例えば、子どもを育てるために何度も繰り返し狩りに挑戦する母ライオンの必死な表情や、乾き切った乾季のサバンナで水を見つけて、興奮のあまり駆け出す子ゾウなど。こうした現場のリアルを、写真を通して届けられたらいいなと思っています。
野生動物たちの力強い姿を美しい写真として撮るだけでなく、動物たちがたまに見せるお茶目な一面や、時にはその背後にある厳しい環境問題の現実なども。遠い地に暮らす動物たちの世界への興味を掻き立てる、そんなきっかけをもたらす写真を残していけたら嬉しいです。