SONY

ソニーイメージングギャラリー 銀座

鹿野宏 作品展 Still×Scapes

カメラマンを目指した最初の目標は風景写真家でしたが、コマーシャル撮影の世界に足を踏み込んで以来、風景写真とは縁遠くなっていました。そんな折、デジタルフォトのセミナーで使用する作例を撮影するために、久しぶりに風景を撮影したのが15年前。その撮影がきっかけとなり、「風景」は私にとって主要なテーマの一つになりました。また、コマーシャル撮影の仕事で多くを占めてきた「スティルライフ」の分野では、数年前から5億画素から20億画素という通常では考えられない画素数の超高精細撮影と動画撮影の仕事もするようになりました。
そうしたカメラマン人生を通して、私が得た世界感の基本となるもの、それは「風景」と「スティルライフ」です。
「Landscape」(風景)と「Still life」(スティルライフ)を組み合わせ、風景とスティルライフ(静物画)の世界の境目に視点を配置したのが、今回の作品展です。
そこで表現手段として、超高精細画像と通常の動画では撮影不可能な「長時間露光」で作り上げたタイムラプスによる動画を表現技術の一つとして組み込んでみました。

長時間露光をコントロールできるタイムラプスは、とても面白い表現手段で非常に写真表現に近い動画だと言えます。山や岩など動かない風景に対して、太陽や月の光が画面に“表情と動き”を与え、長時間露光により波や雲が大きく流れることで、その動きを打ち消すことも可能です。長時間露光のタイムラプスによる作品では、写真表現とはまったく違う世界を楽しむことができるでしょう。

また、超高精細画像は「魂は細部に宿る」を目の当たりにすることができる技術です。例えば、A1サイズにプリントされた風景写真は、作品として十分成立していますが、それを超高精細に撮影し、巨大なプリントにすることで、細部までキレのあるディテールで表現ができ、通常とは異なる感動を呼び起こすことができます。

普段見ている風景やテーブルトップにいくつかの要素を加えたり、そぎ落としたりすることで異なる表情を再現できる、そんな展覧会をお楽しみいただきたいと考えています。

写真も絵画も平面上の視覚表現の手段であることは一緒ですが、絵画は絵の具やメディウムなどの素材を自在に変化させることで表現の幅を広げてきました。同様に写真も反射光だけでなく自ら発光するパネル(ディスプレイ)もアウトプットとして選択することが可能になったのです。表現手段として異なるメディアを吟味していかに選択していくか、これからの写真表現は新しい地平を手に入れています。

鹿野 宏

鹿野しかの ひろし プロフィール

  • 株式会社Lab 代表取締役
  • 電塾 事務局長

デジタル写真の黎明期から中判カメラやスキャナータイプを導入。Nikon D1以降はほとんどのワンショットタイプ一眼レフデジタルカメラを検証。現在の主力は2億画素を誇るハッセルH4DII200MS、機動性・動画性能に優れたPanasonic GX7、SONYα7RIIを用途に応じて使い分けている。
自社スタジオを基盤に、物撮り・ファッション・美術品の撮影、また大型展示物制作・オペラの舞台用背景動画まで、写真・動画をオールマイティにこなす。
「コマーシャル・フォト」(玄光社発行)に「一眼ムービーなんて怖くない!」 スチルフォトグラファーのためのデジタル一眼レフ動画撮影ガイドを連載中。
著書も多数。
CP+、page、PHOTONEXTなどでセミナー講師を務める。