SONY

ソニーイメージングギャラリー 銀座

ないとうようこ 作品展 In between

日本人で唯一のソニー ワールド フォトグラフィー アワード2015プロ部門入賞 ないとうようこ氏

この作品展では、ソニー ワールド フォトグラフィー アワード2015/プロフェッショナル部門 トラベルカテゴリー 3位受賞のないとうようこ氏の作品を展示する。2015年度、日本人では唯一の受賞者のないとう氏は、トラベルカテゴリーのほかにもライフスタイルカテゴリーでトップ10に入選し、将来を有望視されている若手写真家の一人だ。
幼少の頃から父親から譲り受けた一眼レフカメラに親しみ、大学でも写真学科で学んだないとう氏だが、大学卒業後は就職し2年間会社員として過ごしていた。しかし、写真への思いが断ち切れずに、最先端のアートや写真の動向を知るために、単身ニューヨークに渡りアーティストとしての活動を始めた。

写真家への夢を諦めかけたタイミングでの受賞

日本はまだ広告写真と芸術写真の境界線が曖昧だと感じ、芸術写真が世の中に認められている欧米に行くしかないと決意した、ないとう氏。しかし、現地では日本の写真文化や概念は一切通じず、日本人の繊細な感性をいかに欧米文化の文脈の中で伝えていくか、そのことにずっと四苦八苦する生活が続いた。
そうした生活を続ける中「ここまで辛い思いをしてまで写真家にはなりたくはない。もうやめよう」と諦めかけていた、まさにそのタイミングでの受賞だった。受賞の連絡があったときは「やっと来る時がきたな」と感慨深いものがあったという。渡米してからの6年間、「写真とは何か?」「どういうふうに作品を作りあげればアートとして欧米の文脈に、自分の感性を写真に溶け込ますことができるのか?」、といった試行錯誤を積み重ねた結果、撮影できたのが今回受賞した作品『In between』だ。

受賞作品『In between』

受賞作品『In between』では、大自然の中にあるアイスランドでのライフスタイルを捉えている。そこには、
「自然、人間、動物、人工物のお互いの存在意義、お互いの関係性や距離感、そして写真家の私がそれらの中に入ることによって見えてくる“私とそれらの関係性や距離感”。そのすべての関係性を俯瞰して見ると、“人間が地球の中で生きているということへの再認識の喚起”がこの作品の趣旨となっています。」

作品は特定の被写体を殊更強調するのではなく、色調、コントラストを抑えたフラットな調子で、冷静に、そして努めて客観的に風景を捉えた作風だ。何気なく撮影された静謐なイメージのアイスランドの風景写真。フラットで静かなイメージの作品だが、写真全体から受けるないとう氏からのメッセージは非常に力強いものがある。どの作品もいつまでも見飽きることなく、深く鑑賞できる作品である。

最後に受賞後の心境について聞いてみた。
「本作は日本人写真家としてニューヨークを拠点に生活して以来、ひとつの作品シリーズとして完成した初めての作品です。それが今回、「ソニー ワールド フォトグラフィー アワード」を受賞し、欧米人男性の受賞者が多い中で、日本人女性である私の作品が受賞したことは、今までのニューヨークでの辛苦が無駄にはなっていなかったと実感する出来事でした。(ないとうようこ)」

ないとう ようこ プロフィール

福岡県生まれ。2007年日本大学藝術学部写真学科卒業後、会社員を経て2009年に単身渡米、現在はニューヨークを拠点に活動中。
主な受賞歴にソニー ワールド フォトグラフィー アワード2015、プロフェッショナル部門”トラベル”で第3位、”ライフスタイル”で入選。また2014、2015年度に清里フォトアートミュージアム「ヤングポートフォリオ」に入選。その他、佳作に国際写真賞やロンドン国際クリエイティブコンペティション、パリ写真賞などがある。東京やニューヨークを始めとしてヨーロッパ各地でも展覧会を行っている。

ないとうようこ ウェブサイト