内藤 由樹 プロフィール
1987年大阪生まれ。日本でフォトグラファーとして6年活動した後、海外で写真を学ぼうと日本を離れヨーロッパ・アメリカを旅する。2014年より、南米ペルー・リマにあるcentro de la imagenでビジュアルアートのマスタークラスを受講、2015年 master digreeを取得。現在はリマを始めメキシコ等、ラテンアメリカを中心に活動している。
受賞歴
2013 キヤノン写真新世紀佳作 佐内正史選
キヤノンフォトグラファーズセッションファイナリスト
ONAEBA グランプリ
主な展示
- 2016年
- “this is/isn't mine/yoursl” Nii Fine Arts,大阪
- 2015年
- “tiera de piel” Sala Luis Miro Quesada, Lima Perú
“aterritorial” centro de la imagen, Lima Perú
- 2013年
- “キヤノン写真新世紀展” 東京都写真美術館 , Osaka Art Coat Gallery
“キヤノンフォトグラファーズセッションファイナリスト展” キヤノン品川
“being” TOKYO INSTITUTE OF PHOTOGRAPHY
写真集
- 2013年
- “being” TIP BOOKS
内藤由樹氏は、国内外で注目されている写真家でありながら、ペルーのリマに留学し「centro de la imagen」というアートスクールでマスタークラスを受講しながら様々な写真表現を追求している。
海外に行く前は、日本でドキュメンタリーを中心に作家活動をしていた経験があり、写真集も出している内藤氏だが、この作品展では既存の写真表現にとらわれない、独自の視点から発想をベースに、来場者と“記憶”を共有するというコンセプトで構成されている。
前述したように、この作品展は“記憶”がキーワードとなっている。海外で旅をしながら作品撮りを続けていた内藤氏は、タイとメキシコで撮影した犬の写真が、とても似ていることに気づく。違うモチーフでもほかの作品を見直すと、同様に共通点を持つ写真、言い換えるならば、撮影時に受けたインパクトや感動といった“情報”がなくても、見たときに一見して同じ印象を与えるように見える写真が繰り返し撮影されていたのである。
つまり「この場所で、この瞬間でなければ撮れない」と思っていたものが実はそうではなく、どこにでもそうした瞬間はあるうるのだという思いに行きあたったのである。
つまり、ここで撮影した風景や光景は、その場所だけで感じることができる特有のものではなく、世界各地のどこにでも存在し得るのではないのか? それらはバラバラの場所で別の主体によって“記憶”として共有されているのではないのか? と。
ご自身の体験からそういう確認に近い仮定をした上で次のように話してくれた。
「“今、ここで自分が”眼前に屹立する富士山を美しいと感じた瞬間、同時に“世界のどこかで誰かが”まったく別の“山”を見て同じように感動していたとしても不思議ではありません。そして、それは時空を超えた過去においても同様に“イメージの繰り返し”は起こっており、それらは“記憶”の中に残ります。だから、まったく別の山の写真を目にしたとき、人々はそれぞれの記憶の内にある、それぞれの“山”を思い出す。写真一枚のイメージが人に与える幅広いイマジネーションにおいて、「他者の記憶と繋がることができるのではないか、という可能性に非常に興味があるのです。」
この作品展には、作家である内藤氏の“記憶”と来場者との“記憶”が作品を見ることで共有できるような工夫がなされており、プロジェクションとプリント(壁面を使ったインスタレーション)の二つの要素から構成されている。ぜひ、作品展に来ていただき、内藤由樹氏と来場された方との時空を超えた“記憶”の繋がりを体験していただきたいと思う。
プロジェクション
壁面に投影される写真は、通常のスライドショーではなく、映し出される画像の大きさ、個々の写真が投影される時間は、同じ写真でもその都度ランダムに変わるようにプログラムされている。ここでは、投影されては消えていく映像を見ながら時空を超えて、見る人達が過去の“記憶”を共有するという空間を意識している。
壁面を使ったインスタレーション
2013年から撮りためた旅の写真を、内藤氏のイマジネーションに沿って配置していくインスタレーション※をベースに来場者の方との「記憶のつながり」「普遍性かつ共通性」をもとにwork in progress(ワーク・イン・プログレス)※として会期中に進行形で完成させていく。「どこかで同じような風景を見たことがある」「なんだか懐かしい光景だ」など、内藤氏と来場者とのコミュニケーションを通じて壁面が変化して行く様を鑑賞いただきたい。