TAMAZUSA -玉梓-
ギャラリー2
- 展示期間
- 2016年8月19日(金)~9月8日(木)
- 展示時間
- 11:00~19:00
- ※最終日は15:00まで
- ※9月5日(月)は休館
ギャラリートーク開催のお知らせ
大原明海氏によるギャラリートークを開催します。
ゲストに速水惟広氏(Tokyo Institute of Photography ディレクター)をお迎えします。
- 開催日時
- 9月3日(土) 15:00~16:00
- 開催場所
- ソニーイメージングギャラリー 銀座(ソニービル6階)
- 入場無料、事前予約不要です。
- ギャラリートークは記録のために録画します。
- 座席はございません。
この作品展は、江戸中期に活躍した稀代の天才絵師「伊藤若冲」の動植綵絵をモチーフに制作された作品展である。超絶的な技法で描かれた繊細かつ濃密な若冲の世界。その世界観を咀嚼し、写真としての表現を試みたことで大原明海ならではの斬新で新奇な作品となって実を結んでいる。
若冲の世界に近づけるべく模索した過程で生じた重厚な色彩の混濁が現代のアートフォトへと昇華した作品が展示されている。各々が放つ力強さと圧倒的な存在感は他に類を見ない素晴らしいものだ。
被写体は大原が感銘を受けた若冲の南天雄鶏図や紫陽花双鶏図といった動植綵絵にも描かれている“日本鶏”を主とし、イメージに合う様々な植物を大原自身が咲き誇る季節を待って探し出し、幾枚も写真を重ねて時間のパズルを形成し制作されている。
複数の被写体を合わせることで非日常的、あるいは幻想的に仕上げる画像合成は安直に使うと陳腐なものに成りがちだ。しかし、大原の作品はそれぞれの画を丹念に塗り込めることで、多層構造的に肉筆的な“筆致”さえ感じられるような1枚の作品に仕上げられている。
大原が若冲のような作品を制作したいという強い思いを抱いたのは、地元福島での展覧会で初めて原画を見た時だ。前述したように、中でも躍動感溢れる「日本鶏」の一連の作品に心を奪われた。そして、「“絵から学ぶだけでは絵を超えることはできない”と実際の動植物を凝視し、生物の内側に神の気が宿っていることを実感しながら筆を執った若冲の絵師としての姿勢は写真家にとっても同じだと言えるのではないだろうか」、という大原の思いがこの作品展の原点となっている。
若冲は絵の技能を磨くために京都中の寺院を訪れ秘蔵されている中国画を模倣する作業を営々と続け、臨写したその数は1000本にも及んだという。その作業を通して中国画の魅力を知る若冲だが、それと同時に自分だけが表現し得るものは何かを考えた。そして至った結果が300年後の現在も輝き続ける若冲の作品なのである。大原が若冲の絵の虜となり、その構図、色彩を追い求め続ける中で独自の表現に至った過程と、若冲のそれとは遠からず重ね合わせることができるのではないだろうか。
伊藤若冲の絵とこの作品展に展示された写真それぞれが醸し出す魅力の類似点や現代のデジタルアーツならでは表現との違いを感じることができる魅力のある作品展である。