角田 和夫 プロフィール
1952年生まれ 高知県高知市出身 高知県立高知工業高等学校機械科卒
大阪写真専門学院卒 日本写真作家協会(JPA)会員
主な経歴
- 1988年
- 個展「満月の夜」 コダック フォトサロン(東京、大阪)
- 1989年
- 個展「土佐深夜日記」 ニコンサロン(東京)
- 1995年
- 個展「追憶の旅 - 旧・満州へ -」 富士フォトサロン・プロスペース(東京、大阪)
- 1997年
- 個展「散歩の風景 - 私の見たニューヨーク -」 コニカプラザ(東京、大阪)
- 1999年
- 文化庁派遣芸術家在外研修員として、ICP(国際写真センター)で研修(ニューヨーク)
- 2001年
- 個展「ニューヨーク地下鉄ストーリー」 ニコンサロン(東京)
- 2002年
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- 第11回林忠彦賞受賞記念写真展「ニューヨーク地下鉄ストーリー」
- 高知県立美術館常設特別展「NO BORDER -2」展(高知)
- 写真集「ニューヨーク地下鉄ストーリー」出版
- 写真集「シベリアへの旅路 - 我が父への想い」出版
- 2004年
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- 個展「シベリアへの旅路 - 我が父への想い」 コダック フォトサロン(東京)
- IPA(International Photography Awards) カテゴリー/写真集 2位
- 2005年
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- 個展「ウラジオストック Day Time」 Arka Gallery of Contemporary Art(ロシア)
- 個展「New York Days, New York Nights」 OK Harris Works of Art (ニューヨーク)
- 2006年
- 宮崎進&角田和夫二人展「シベリアから平和を考える」 香美市立美術館(高知)
- 2010年
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- 個展「My Journey to Siberia」 コダック フォトサロン(東京)
- UK-JAPAN ADF AWARD 2010 ファイナリスト
- 2011年
- 個展「New York Offer」 ARLATINO Gallery(フランス)
- 2013年
- 個展「Notes from Underground: Memories of my Uncle.」 Laurence Miller Gallery(ニューヨーク)
- 2013年
- 「Notes from Underground: Memories of my Uncle.」がシカゴ美術館(アメリカ)に収蔵される
- 2014年
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- De La Salle University(フィリピン マニラ)教授に赴任
- Vladivostock State University of Economics and service(ロシア)短期写真講師
- 2016年
- IPAD Photography Show に出展(ニューヨーク)
角田和夫氏は国内外で高く評価されている写真家である。ニューヨークの地下鉄でのシーンをドキュメンタリー的な表現の中にアーティスティックな感性を取り入れて撮影した「ニューヨーク地下鉄ストーリー」で、栄えある「第11回林忠彦賞」を受賞し、また海外のギャラリーや美術館などの著名なキュレーター達からも斬新で芸術性に富んだ作風が高く評価され、3年連続でパリ・フォトに出展するなど様々な形でオファーを受けている。
この作品展は、こうした国内外での芸術活動や功績により角田氏がフィリピン・マニラ市にあるデ・ラ・サール大学から招聘され教授をしていた2014年から2016年にマニラの夜のストリートを撮影した作品が展示されている。
タワービルが林立するフィリピンの首都マニラ。富裕層が行き交う街中の銀行や大型ショッピングモール、高層コンドミニアムなどのいたる所にショットガンを手にした警備員が立っており、その周辺にはストリートチルドレン達の姿があった。角田氏が教授として勤務する大学周辺も同様で5~6歳位のストリートチルドレンが常時集まっていた。比較的豊かな家庭に育った学生たちに物乞いをするためだ。これが、富裕層と貧困層が極端に入り混じる首都マニラが抱える現実なのである。
ストリートチルドレン達が眠りに帰る混沌とした夜のスラム街。しかし、その街にも一筋の光が感じられる光景に出会うことがある。板切れをつぎはぎにした小屋の中で、ランプを灯して夕食の準備をしている母親。わずかな食事を分け合って食べている家族。肩を寄せ合って寝転ぶ家族。貧しくても共に生きようとする家族団らんの姿がそこにあった。
強いコントラストの大都会マニラの姿。危険が潜む夜の大人の世界のすぐそばで、屈託のない笑顔を見せる子供達。どの子供も澄んだ目をキラキラさせて人懐っこくまとわりつき「写真を撮ってほしい」とせがむ。また、意外にも彼らの家族もフレンドリーで撮影の許可を請うと笑顔で角田氏を快く迎え入れてくれた。そこには、人間味のある、何か幼い頃の遠い昔の日本を思い起こさせる温もりがあった。
角田氏は、そうしたヒューマンな側面と、彼らを取り巻く厳しい現実との両面にレンズを向け撮り続けた。
大都会の陰で、さまざまな人々が蠢動する夜のスラム街。そこに“生まれ、生きる”ことの現実を肌身で感じ、そして屈託のない子供達の笑顔のままに彼らの未来が明るいものとなるよう共に祈りたくなる作品展だ。事実、この撮影に協力してくれた角田氏の友人のエリックは、こうしたスラム街の出身であり、今ではマニラで写真家として活躍している。