1979年熊本生まれ。幼少の頃から自然が大好きで、高校時代からフィルムカメラでの生きものや星空などの撮影に取り組む。大学在学時に始めたスキューバダイビングに夢中になり、水中写真撮影を開始。現在は四国を中心に水中・陸上問わず様々なネイチャー撮影に取り組む。近年では深海生物や浮遊系のプランクトンを対象としたblack water(ブラックウォーター)と呼ばれる水中写真シリーズ、四国で撮影したヒメボタル、コウモリの越冬コロニーの様子をとらえた写真が海外で注目され、これまでイギリスの The GuardianやDaily mail、アメリカのThe Weather ChannelやWIRED、Brasil BBCなどの多数のメディアによって特集されている。現在、愛媛大学沿岸環境科学研究センター准教授。
野見山桂 ウェブサイト
受賞歴
- 2013年
- ネイチャーベストフォトグラフィジャパン(NBPJ) Small world優秀賞
- 2015年
- National Geographic Photo Contest, “Editors Favorite”
- 2016年 4月
- Sony World Photography Awards 2016にて、日本人初のPhotographer of the year(一般公募部門)受賞。また同作品にて日本部門賞1位受賞
- 2016年 10月
- National Geographic Photo Contest, “Editors Favorite”
- 2016年 10月
- International Photography Awards (IPA)にて、Non-Professional Nature Underwater部門の1st Placeを受賞すると共に2016 Best of Show photographersへ選抜
掲載歴
- 2015年 11月
- プランクトンを捉えた写真がアメリカのWIREDで特集
- 2016年 1月
-
- コウモリの集団冬眠の写真がイギリスDaily Onlineで特集
- コウモリの集団冬眠の写真がイギリスのThe Guardian newsの“eyewitness”に掲載
- 2016年 10月
- ホタルの写真がアメリカのWIREDで特集
野見山桂氏は、国立大学法人 愛媛大学 沿岸環境科学研究センターの准教授であるともに2013年ネイチャーベストフォトグラフィジャパン(NBPJ) Small world優秀賞、また2016年にはソニーが支援する世界最大規模の写真コンテスト「ソニーワールドフォトグラフィーアワード」の一般公募部門で日本人初となるPhotographer of the yearを受賞するなど、数々の受賞歴を持つ写真家でもある。
野生生物を対象とした環境汚染問題に取り組みながら日本だけでなく世界各地で撮影した野見山氏の野生生物の作品は、日本だけでなく欧米でも非常に高い評価を受けている。
作品展には四国の沿岸や山林で撮影された野生生物の活き活きとした美しく興味深い作品を見ることができ、その作品は写真芸術的にも、学術的にも素晴らしいものである。
例えば、陸棲で森林に棲息するヒメボタル(姫蛍)や、主に川辺に棲息するゲンジボタル(源氏蛍)を夜間に長時間露光で撮影した作品は息を呑む美しさだ。無数のホタルが月夜に舞う、その美しく幻想的な光景は圧巻である。また、この作品展の目玉の一つが数千匹のユビナガコウモリが“冬眠洞窟”で身を寄せ合い冬眠している作品だ。コウモリの生活史は、学術的にもあまり知られておらず、冬眠洞窟を見つけること自体が難しいため、数千匹が身を寄せ合っている様子を捉えた写真は非常に貴重だ。この撮影場所は、コウモリを調査している研究者によって発見されるまでに数年の月日を要している。そうした事情からもこの作品は世界各国から注目され欧米の数々の雑誌などに掲載されている。
前述の作品以外にも、四国沿岸で撮影された様々な魚種をマクロレンズで近接撮影した作品は、被写体となった魚やクラゲといった海洋生物の優美なフォルムを非常に興味深く鑑賞することができる。また、回遊せずに高知県沿岸に生息するニタリクジラが遊泳する迫力のあるシーンを捉えた作品も見応え十分だ。
四国には、まだ豊かな自然が残っている。高知県柏島の海には日本にいる魚種の3分の1(約1000種)が棲息すると言われている。また、陸環境も、室戸岬の亜熱帯性樹林、沿岸から低地に発達する照葉樹林、広大な面積を占める人工林、四万十川や仁淀川、そして吉野川などの河川と多数の清冽な支流があり、そうした自然の中で多種多様な生物を比較的容易に見ることができる。
しかし、こうした豊かな自然は地球温暖化や森林開発、水質汚染といった環境変化に対し非常に敏感だ。今、見ている無数のホタルが一夜にしていなくなることもある。
例えば、ヒメボタルは幼虫が森林に生息するため、森林破壊などによる環境変化の影響を非常に受けやすい種である。またメスが飛行できないため分布地の移動性が小さく、森林が破壊されたからといってそこから移動することができない。そうした意味からも生息地の森を守ることは重要だ。環境保護はホタルだけでなく、その他の野生生物にも共通する課題なのだ。
この作品展を通して四国の豊かな自然や生物の感動的なシーンの裏側で起こっている環境変化に関心を持ってもらうことも、この作品展を開催する目的の一つなのだと野見山氏は語ってくれた。