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ソニーイメージングギャラリー 銀座

吾妻克美 作品展 和響

日本は豊かな自然に恵まれ四季折々の美しい風景を楽しむことができます。そうした環境もあり古来から草花や樹枝を器に生けて楽しむ文化がありました。それは室町時代に入って形づくられ徐々に伝統芸術である華道へと昇華されていったのです。自然の中にある“美しさ”を花に託し“生ける”ことで“美”を表現することと、美しい自然風景を写真という“器(花器)”に写し込むことは、芸術としての表現において通じるものがあるように感じていました。また、同様に“和”の美しさや奥深さを表現した掛け軸(日本画)などとも通じるものがあることから、それらを意識しつつ作品を撮り続けてきました。

この作品展に展示する作品は、すべて“和”の美しさを追求したものです。各作品のアスペクト比は敢えて細長く、または正方形にトリミングしています。撮影時にはトリミングをしてはじめて作品として完成することを前提に慎重に構図を決定しました。トリミングには重要な意味があります。それは、絵師が一幅の掛け軸を描くのと同じように私の世界観で自然風景を切り取る表現手法なのです。すべてを見せるのではなく、そのアスペクト比の中に“美しさ”のエッセンスを閉じ込めることで外に広がる美しい風景を想像できるからです。それは華道や日本画といった“和”の美しさを追求した芸術と通じる表現手法だと思います。

京言葉には上品で落ち着いた華やかさを意味する“はんなり”という言葉があります。“和”の美しさの本質には、この“はんなり”に通じるものがあると思っています。
情緒あるしっとりとした中に匂い立つような上品で華やかな美しさを含んだ“和”の情景を写した作品を心静かに堪能していただきたいと思います。それぞれの“和”の風景が共鳴し美しさを奏でる。作品展タイトルの『和響』(和の響き)には、そういう私の想いが込められています。

吾妻あがつま 克美かつみ プロフィール

仙台デザイン専門校卒

2008年~2011年
中央工学校生涯学習センター「竹内敏信の新・風景写真塾」受講
2011年~2015年
全国二科展連続入選
2014年
  • 東北二科展入選
  • 宮城県芸術協会芸術祭 公益財団法人宮城県文化振興財団賞
2015年
宮城県芸術協会芸術祭 宮城県知事賞

宮城県芸術協会会員、二科会宮城県支部写真部副支部長、日本写真作家協会会員