宙と墨(そらとすみ)
- 展示期間
- 2017年6月9日(金)~6月22日(木)
- 展示時間
- 11:00~19:00
ギャラリートーク開催のお知らせ
松龍氏によるギャラリートークを開催します。
- 開催日時
-
- 2017年6月17日(土) 13:00~13:45
- ゲスト
- 神島美明氏(写真家)
- 2017年6月17日(土) 16:00~16:45
- ゲスト
- 高崎勉氏(写真家)
- 2017年6月17日(土) 13:00~13:45
- 開催場所
- ソニーイメージングギャラリー 銀座(銀座プレイス6階)
- 入場無料、事前予約不要です。
- ギャラリートークは記録のために録画します。
- 座席はございません。
写っているものが“曇天”と“電線”だと聞いて、驚かない人はいないのではないか。
広大な宙(そら)を縦横無尽に走り、躍り、跳ねる電線は筆勢盛んな墨跡のようであり、まさに墨痕淋漓(ぼっこんりんり)とした前衛書道のようである。
「電線は宙を走るアートだ。それは、硬筆で丁寧に書かれた一本の線であったり、あるいは毛筆による墨象(前衛書道)でもある。」と松龍氏。
ある日、松龍氏は曇天に走る何本もの電線を見た瞬間、それをモチーフに“前衛書道”的な要素を取り入れたアート性の高い作品にすることができるのではないかと閃いた。前衛書道家の“書”を丹念に見つめ、それが持つ味わいや表現を研究し作品に生かしたのである。
しかし、最初はただ曇天に電線が写っているだけの写真でしかなかった。何百枚も撮影を繰り返し、様々に工夫を凝らすことで、毛筆特有の“跳ね”や“かすれ”などが表現できる方法を編み出したのだ。たとえば、電線をシャープに撮影した画像とピントをずらした画像や低速シャッターでブラした画像などをデジタル的に合成することで、墨跡らしい表現を可能にしたのである。
被写体は“曇天”と“電線”。イメージに合った電線を探して歩きまわった。街並みが整備された新興住宅地よりも、昔からある古くてごちゃごちゃとした住宅地のほうがイメージを刺激する“電線”を見つけやすいのだ。また、電線には様々な表情がある。それは、電気工事業者により電線の巻き方や処理の仕方が違うからである。例えば几帳面にきっちりと巻かれたものもあれば、ラフに巻いてあり途中で電線が切れて垂れ下がっているものなど様々で、後者はより“書”の世界を連想させてくれた。
作品展には電線をモチーフにした作品の他に前衛書道家である奥平野牛氏の“書”を部分的に写し取った作品も展示している。奥平野牛氏は松龍氏の友人のお父様であり作品をつくる上で様々に影響を受けた。
ひと時、“電線”と“書”の混沌とした世界に迷い込んでいただきたい。