1965年 名古屋市生まれ。東京都在住。
フランス料理シェフからフォトグラファーに転向。
デザイン制作会社写真部にてコマーシャル撮影に従事する。
プライベートで撮りためていた作品をコンペに出展した際に、審査員を務めていたニューヨーク在住のAction Still Life写真家HASHI氏と出会い、翌年からHASHI STUDIO TOKYOで約1年半修行をする。
その後、フリーランスフォトグラファーとして生計を立てながら、作家として作品制作を始める。
グループ展&受賞歴
- 2017年
- “ソニーワールドフォトグラフィアワード2017年度受賞作品展”(ソニーイメージングギャラリー銀座)
- 2017年
- “8th アニュアル・センター・フォワード・エキシビジョン”(アメリカ、コロラド、ザ・センター・フォー・ファインアート・フォトグラフィ)
【Director's Honorable Mention受賞】
- 2017年
- “ザ・フェンス2017”(アメリカ、ブルックリン・ボストン・アトランタ・ヒューストン・サンタフェ・ダーラム・デンバー)
- 2017年
- “ソニーワールドフォトグラフィアワード2017”(イギリス、ロンドン、サマセットハウス)
【プロフェッショナル 静物 第2位(Professional ,Still Life, 2nd Place)受賞】
- 2016年
- “フォウ エキシビジョン”(アメリカ、コロラド、ザ・センター・フォー・ファインアート・フォトグラフィ)
【Director's Honorable Mention受賞】
- 2016年
- “イースト—ウエスト・アート・アワード・コンペティション 2016”(イギリス、ロンドン、ラ・ガレリア・ポールモール)
【写真部門 第3位受賞】
- 2013年
- “イースト—ウエスト・アート・アワード・コンペティション 2013”(イギリス、ロンドン、ラ・ガレリア・ポールモール)
【写真部門 第1位受賞】
個展
- 2017年
- “花札装束 HANAFUDA SHOUZOKU”(ソニーイメージングギャラリー 銀座)
- 2016年
- “KATSUKO”(マレーシア、クアラルンプール、アルテミス・アート・ギャラリー)
【クアラルンプール・インターナショナル・フォトアワード・エキシビジョン・フォーカス・ジャパンの招待作家として】
ある日、故郷の母が送ってくれた食べ物を、箱から出しもしないまま腐らせてしまったことがありました。わざわざ送ってくれた母を思って切なくなりましたが、朽ちた食材たちが横たわる、棺桶と化した段ボールを見下ろしながら、「形あるものはいつかなくなる」という亡き祖母の口癖を思い出しました。
生を全うしたものは、その姿を失っていくものです。何人たりとて、その流れを止めることはできません。ならば、せめて送り手の愛を何らかの形にして残したい。そんな想いがふつふつと湧いてきました。
たとえ食べ物としての価値はなくなっていても、人の想いはまだそこに宿っているはずです。であれば、その想いすらも消え去ってしまう前に、腐敗した食べ物に死装束を施し、送り出そう、と思いついたのです。
手向けのモチーフに選んだのは「花札」です。
何百年もの間日本人に愛されてきた花札には、12ヶ月それぞれの花鳥風月が描かれています。また、「花見酒」等、札の組み合わせによって、四季折々の風物詩を心待ちにし、刹那の美を五感全てで愛しむ、という日本人特有の自然との付き合い方が端的に表現されています。
わたしに花札の手ほどきをしてくれたのは、諸行無常の概念を口癖のように教えてくれた祖母でした。
母から届いた季節の食材は、祖母と遊んだ花札の装束を纏って彼岸へと旅立ちます。此岸に残されたわたしは、母の愛が形ある「もの」から「記録」へと移りゆく瞬間を切り取りながら、その想いに祈りを捧げていくのです。
増田 伸也