木村華子 作品展 SIGNS FOR [ ]
木村華子(きむら はなこ)プロフィール
京都府出身、大阪市在住。同志社大学文学部美学芸術学科卒業。
商業フォトグラファーとして広告や雑誌などで撮影する傍、2011年頃から自身のライフワークとして作品制作を開始。
主に「存在する/存在していない」などの両極端と捉えられている事象の間に横たわる広大なグレーゾーンに触れることをステイトメントの中心に据え、コンセプチュアルな作品を展開する。
また近年は写真表現だけに留まらず立体作品、コラージュ、ドローイング、インスタレーションなども手がけている。
受賞歴
- 2020年
- 「Sony World Photography Award 2020」日本部門賞2位
- 2018年
- 「UNKNOWN ASIA 2018」 レビュアー賞5部門、審査員賞4部門、グランプリ受賞
ほぼ日刊イトイ新聞「わたしの定点写真コンテスト」作品賞受賞 - 2017年
- 第16回写真「1_WALL」審査員奨励賞受賞 (菊地敦己氏選)
- 2013年
- 「KYOTO PHOTO AWARD 2013」アワード部門優秀賞受賞
- 2012年
- 「御苗場vol.11」 レビュアー賞2部門受賞
主な展示
- 2019年
- グループ展「WFD × Auction Center Taipei」台北オークションセンター・台北
アートフェア「ART OSAKA 2019」ホテルグランヴィア大阪・大阪
アートフェア(滞在制作、作品展示) 「ON/OFF PARKING LOT PROJECT」華僑城創意文化園・深圳
グループ展「THE STORIES of "UNKNOWN ASIA"」THE STORIES・大阪
アートフェア「Wonder Foto Day 2019 台北国際写真交流展」松山文化クリエイティブパーク・台北
アートフェア「ART FOUND 04」The Jam Factory・バンコク - 2018年
- グループ展「UNKNOWN ASIA Art Exchange」ダイビル本館・大阪
- 2016年
- 個展「写真庭園プロジェクトVol.2 眼火閃発」中之島Spinning・大阪
個展「写真庭園プロジェクトVol.1 発光幻肢」gallery Main・京都 - 2013年
- ふたり展「KYOTO PHOTO AWARD 優秀賞受賞者展」GALLERY 9・京都
御苗場受賞者展「Selected Photographers」72Gallery・東京 - 2012年
- ふたり展「木村<交差>展」壹燈舍・大阪
木村華子氏 ギャラリートーク
ゲスト:速水惟広氏
statement for “SIGNS FOR [ ]”
街を歩いていると、ある時から何も描かれていない看板が目に留まるようになった。
堂々と頭上に掲げられた意味を持たない空白。
それは「全てのものは存在意義がなくとも、そこに存在している」ということを人々に知らしめるためのモニュメントのように見えた。
本作はそのような頭上の空白を切り出し目線高に設置して、青い光で照らすことによって私がそれらから得たメッセージをより明確に可視化する試みである。
木村華子
"SIGNS FOR [ ]" によせて。
木村華子の作品を初めて見たのは「御苗場」という写真コンペティションの会場だったと思う。
鮮やかな色が特徴のスナップショットだった。
ちょうど大学を卒業し、カメラスタジオに入社し、コマーシャルの仕事をしながらのファインアートでの作品制作も始めたタイミングだったようだ。
コマーシャルの仕事とファインアート作品の両立は意外と難しい。同じ写真でも最終的なゴールの向きが全く逆だからだ。
あくまでもクライアントの意向をヴィジュアル化するコマーシャルと、作家個人の思いを写真のするのは、撮影するという行為だけが一緒で、重きをおくポイントが全く違うのだ。
木村はそのような状況を楽しみながら制作しているようだ。
アジアのアーティストを対象としたイベント「Unknown Asia」でグランプリを取った"SIGN FOR [ ]"では、何も書かれていないビルボードの堂々とした存在感を捉え、それを照らす青いネオン管を画面に加えている。
「【意味があること/ないこと】の間を何も描かれていない看板を通して見つめること、それ自体の存続は、意味が有る無しには左右されない。」という哲学的なコンセプトだ。
加えられるネオンの青は、その色の光が精神の高ぶりを抑える作用があるところからきているそうだ。
そういった説明を聞かなくとも、トマソン的*1な意味のない空虚感と不思議な明るさが印象的で、強く頭に作品イメージが残り、私には今の時代のポートレイトのように見えた。
また、それは「今のわたしのポートレイト」とも見える。
トマソンと呼ぶにはあまりにクールでシリアスなそのポートレイトは、青いライトに照らし出されて、つかみどころがない。
つかもうとするとスルリと抜けていくようなこのイメージから、今後どう展開するのか楽しみだ。
綾 智佳(The Third Gallery Aya)
注釈*1 トマソン
超芸術トマソン(ちょうげいじゅつトマソン)とは、赤瀬川原平らの発見による芸術上の概念。存在がまるで芸術のようでありながら、その役にたたなさ・非実用において芸術よりももっと芸術らしい物を「超芸術」と呼び、その中でも不動産に属するものをトマソンと呼ぶ。