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日本大学芸術学部写真学科 教員作品展 SKY III 田中里実/服部一人/浅井譲

昨年に引き続き、日本大学芸術学部写真学科専任教員による写真展「SKY Ⅲ」を開催させていただくことになりました。作品発表を念頭におき写真制作をしている3名の作品を紹介いたします。

私ども教員は日本大学芸術学部写真学科を卒業した同窓生でもあり、先達の師より厳しく基礎 技術を学び、それを踏まえた上で自己表現を展開すべく写真表現を研究し、実践しております。また多くの学生達と向き合い、語り合う中で、幅広い写真の世界に日々接し、試行錯誤するなかで、自然と多様な写真表現にトライすることになります。

しかしながら本職は教員であり教育を中心としながらの制作となります。撮影時期や場所など数々の制限があるうえに、本年はCOVID-19、新型コロナウイルス感染症による自粛も続いたために、公の場において初公開ではありますが、これまで撮りためてきた作品を中心とする展示となりました。今後いつ自由に海外へ撮影に行けるか不明な状況の中で、遠い異国の風景をお楽しみいただければと存じます。

浅井譲は、ヨーロッパ、アメリカ、日本における旅でのスナップを三部構成で展示します。フランス、モナコ公国、イタリアと隣り合う国の都市風景を車をキーとして一つのイメージに作り上げています。アメリカはニューヨークにしぼり、写真と共に旅を楽しむ観光客の姿を捉えています。同様の手法で日本国内各地でも写真を楽しむ人々を中心とした作品です。「愉しむ写真へ」には、作者である浅井の旅の中で写真を愉しむ姿勢が主ではありますが、撮影する人々の姿に浅井の姿が同化している作品ともいえるものです。

田中里実は、初期の写真やその技法を研究対象としています。写真史にまつわる場所や、過去に撮影された場所に赴き時間を経た空間を再度撮影する手法で作品制作を継続しています。本年は塩化銀紙による最新作で、被写体はイギリス、レイコック・アビーを中心とする風景です。この地は世界初のネガ・ポジ法カロタイプを発明したウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットが居住していました。タルボットへのオマージュとして、当時タルボットも眺めたであろうレイコックの景色をタルボットと同様のプリント技法により制作しています。

服部一人は、昨年に引き続いての登場です。服部は国内はもちろん、現在でも国内外を旅して撮影を続けています。さすがに本年は旅に出られず、2011年に撮影し長年間あたためてきたキューバの作品を展示します。キューバは2015年にアメリカと国交を回復し、その後、街や人々の生活に変化が生じています。しかしながら服部がハッセルブラッド、広角レンズによって捉えたスナップ写真は、それ以前の愛すべき市井の人々や穏やかな街の姿など今ではもう見ることのできないキューバが表現されています。

偶然にも海外で撮影した作品が主に並びました。デジタル、古典技法(塩化銀紙)、フィルムと三人三様のスタイルによる制作、最終仕上げにまでこだわり自らプリントしたオリジナル作品から3人の表現世界をご高覧ください。彼らの表現の広さと深さを感じて頂ければ幸いでございます。

日本大学教授 西垣仁美

田中 里美 TANAKA Satomi プロフィール

1960年、石川県生まれ。航空自衛隊航空学生、一般企業勤務などを経て40歳を過ぎてから日本大学芸術学部写真学科に入学。同校大学院を経て、現在日本大学芸術学部写真学科准教授として勤務。大学では写真の基礎を中心に指導を行っている。自身の研究テーマとして初期写真技法の研究を行うと同時に、それらの技法を現代写真技法に活かせる方法論も研究している。自身の作品は写真の記録性を重視し、8×10インチの大型カメラから35ミリカメラまで使用して銀塩黒白写真を制作。どのようなフォーマットのネガから、あるいは海外渡航によるX線検査済みフイルムからでもより良いプリントを完成させる事を目指している。
公益社団法人 日本写真協会会員、日本写真学会会員、日本写真芸術学会会員

<主な写真展>

  • 「夢幻泡影」ギャラリーストークス 2019年
  • 「SKYⅡ 日本大学芸術学部写真学科教員作品展」 ソニーイメージングギャラリー 2019年
  • 「室野今昔−昭和33年から47年の室野そして令和元年」 奴奈川キャンパスギャラリー 2019年
  • 「Paris perspective Atget et Marvill」GELLERY STORKS 2019年
  • 「SKY 日本大学芸術学部写真学科教員作品展」 ソニーイメージングギャラリー 2018年
  • 「大地と生きる」 大地の芸術祭(新潟県十日町市)共同制作 2018年
  • 「私たちの職場から」 第30回日本老年泌尿器学会 2017年
  • 「35×35 写真史の旅」 ギャラリーストークス 2016年
  • 「Entrance・Geometry」グループ展 池袋WACCA 2015年
  • 「インタセクションプロジェクト−平行する交差点」 2014年
  • 「鉄・彫・写」 星と森の詩美術館 鞍掛純一共同制作 2013年
  • 「a flower is not a flower」N+N展 練馬区立美術館 鞍掛純一共同制作 2013年
  • 「やまのうえした」 大地の芸術祭(新潟県十日町市)共同制作 2012年
  • 「Typology Series No,1 “Entrance”」ギャラリーストークス 2011年

服部 一人 HATTORI Kazuto プロフィール

1961年、名古屋生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、(株)日本デザインセンターに勤務。退職後、独立行政法人国際協力機構(JICA)により、ケニア国立ナイロビ博物館、タイ チェンマイ山岳民族博物館、アユタヤ歴史研究センターに派遣。のべ約9年間を発展途上国で過ごす。帰国後、東京をベースにフリーランスフォトグラファーを経て、現在日本大学芸術学部写真学科准教授。大学では初年時の写真基礎演習のほか、ドキュメンタリー写真全般を扱うゼミナールを担当している。
学生時代より多く旅に出かけ、デジタル、銀塩を問わず旅先のストリートスナップショットを撮影している。写真以外にも、ラオス、タイ北部の少数民族を対象にフィールドワークをおこない、映像人類学の動画を研究者とともに制作している。
公益社団法人 日本写真協会会員、日本写真芸術学会会員、東京都写真美術館外部評価委員

<主な写真展>

  • 「Days in Africa」ギャラリーストークス 2019年
  • 「駅・雑踏・トラム」ソニーイメージングギャラリー 2019年
  • 「ジェニファーの結婚式・モゴの結婚記念日」ギャラリーストークス 2018年
  • 「窓の向こうに」ギャラリーストークス 2015年
  • 「タイ山岳民族の村から」ナガサキピースミュージアム 2007年
  • 「ビルマの人」コダックフォトサロン 2000年
  • 「一期一会」視丘撮影美術館(台湾) 1991年

<主なグループ展>

  • 「SKYⅡ 日本大学芸術学部写真学科教員作品展」 ソニーイメージングギャラリー 2019年
  • 「Railway」ギャラリーストークス 2019年
  • 「暗室からコンニチハ」ルーニー247ファインアーツ 2019年

<主な民族学映像>

  • 「森の再生 言葉の再生」(NPO法人メコン・ウォッチ共同制作) 2013年
  • 「ソンクラーン 新年を迎える儀式 タイ チェンマイ」(金沢大学共同制作) 2012年
  • 「アユ村の過去と現在 中国雲南省ラフ族村の暮らし」(金沢大学共同制作) 2011年
  • 「ラフは唐辛子」(金沢大学共同制作) 2010年

浅井 譲 YUZURU Asai プロフィール

1956年東京都生まれ。1980年日本大学芸術学部写真学科卒業後、㈱ポーラ化粧品(現ポーラ)に入社、宣伝部制作室のフォトグラファー・アートディレクターとして活動。2002年より母校の非常勤講師を務め、2004年に同社を退社し写真家として独立するとともに母校の助教授となる。2009年に教授、2016年学部執行部、2019年より学科主任を歴任。研究領域は写真表現(広告)を中心に行っている。2011年~2018年東川町国際写真フェスティバル レビュアーや2015年~日本写真館賞審査委員(協同組合日本写真館協会)などの外部協力も行っている。
展示作品は、ライフワークとしている「愉しむ写真へ」をテーマに制作し、日本大学芸術学部紀要(創作篇)にて発表した作品を中心に構成した。
公益社団法人 日本広告写真家協会正会員(APA)、日本写真芸術学会会員

<主な写真展>

  • 「Wonderful」 PICTORICO GALLERY(東京)2019年
  • jing特別企画「まあるい展」Vol.4 Space Jing(東京)2019年
  • jingな人人「いろ色展」Vol.5 Space Jing(東京)2017年
  • jingの夏展Vol.4 Space Jing(東京)2016年
  • jingの桜展Vol.3 Space Jing(東京)2015年
  • d-labo女子部写真セミナー展 富士フイルムフォトサロン東京(東京)2013年
  • 「take a picture」 - 愉しむ写真へ 富士フイルムフォトサロン東京(東京)2011年
  • 「対話」愉しむ写真へ -2 コダックフォトサロン(東京)2007年
  • 「対話」愉しむ写真へ コダックフォトサロン(東京)2004年
  • APA YES/NO企画展 東京都写真美術館(東京)1999年
  • コダック広告塾コンテスト入賞作品展 コダックフォトサロン(東京)1990年
  • APA日本の広告写真展 渋谷西武百貨店他(東京)1988年