姫野 顕司/野々山 裕樹/Nigel Wong 作品展
#Photo3.0
- 会期
- 2022年8月12日(金)~8月25日(木) 11:00~18:00
プロフィール
姫野 顕司(ひめの けんじ)
個展
- 2021年 「PERSEUS」(Alt_Medium 高田馬場)
- 2022年 「幻肢」(rusu 目黒)
野々山 裕樹(ののやま ひろき)
- 1991年生まれ
- 2019年 1_WALLファイナリスト
- 2020年 EMON AWARDファイナリスト
- 2021年 清里フォトアートミュージアムへ作品収蔵(ヤング・ポートフォリオ)
Nigel Wong(ナイジェル ワン)
- 1990年 香港生まれ
- 2012年 国立台湾大学哲学専攻卒業
- 2021年 東京綜合写真専門学校卒業
- 金村修ワークショップ参加
姫野顕司、野々山裕樹、Nigel Wong(ナイジェルワン)の3名の作家による展示「#Photo3.0」を行います。
写真家3名それぞれがデジタルネイティブであり、異なる文脈の影響を受けた作品を製作していることから、フィルム写真などを用いた旧来の歴史や技術を踏まえた写真表現や、デジタル画像やSNSといった現代社会の要素を用いた表現を同じ空間に展示します。
姫野顕司は都市のスナップ、野々山裕樹は日本の写真家に影響を受けた手作業でのネガフィルムの再構成、Nigel Wongは紙を使用して、画像データの物理的な質量を表現しています。
また、2000年代以降の文化であるSNSと写真表現の融合を目指し、Instagramのタグ付け機能を使用した観客参加型のコラージュを行います。
さらに、展示会期中には2010年代以降の技術であるNFTを使用してコラージュ作品を代替不可能なデジタルデータとして参加者へ還元します。
それぞれの考え方と結果を同じ場所に置くことで、対話の可能性が生じると考えます。
姫野顕司は、都市の風景を撮影したスナップ写真を展示します。
姫野の写真はリー・フリードランダー(1934〜)のアメリカ都市風景を撮影した写真や、砂漠を撮影した写真集「The desert seen」を意識し、整理された構図により成立します。
写真を2mに引き伸ばすことで、都市のディテールを強調します。
野々山裕樹は、ネガフィルムを解体して再構成した作品を展示します。
ネガフィルムを再構成するという手法は、近年の二つの荒木経惟(1940〜)の作品に影響を受けています。一つ目は2011年出版、『写狂老人日記』。モノクロフィルムを削り、そのフィルムをプリントして集めて一冊の写真集を作った作品です。二つ目は、2014年荒木経惟の写真展「切真」(きりしん)の図録です。この写真展はカラーポジフィルムのイメージを半分切って、また別の切られた半分のフィルムと組み合わせた作品でした。野々山も手作業でフィルムを重ねて繋ぎ合わせる手法を使用することでイメージの層と物質性を表現しています。
Nigel Wongは、デジタル写真の非物質性に着目し、ウィキペディアに現存する著作権がない、世界で最も古い写真原版の画像をコードに変換して、その文字列をプリントアウトしました。
現在のデジタル画像は二進法によって記録され、アウトプット機械(多くの場合はモニター)によって表したものです。1970年代以降に、PCメモリの大容量・低廉化やコンピュータ用ディスプレイシステムの発展と共に、ピクセル(画素)を用いた画像処理が進化していきました。写真においては2000年代にデジタルカメラの売上がフィルムカメラを超過し、デジタル画像は現在の写真において重要な要素となっています。
プリントアウトされたデジタル画像のコードを展示するためには何かの形にする必要がありましたが、大量の紙で構成を行い質量を表現しました。
Nigelの作品は、写真表現においても重要な要素となった画像データを紙で表現することで、非物質の物理的な質量という相反する要素を提示しています。
コラージュ作品の壁面では、SNSと連動した製作を行います。
「#Photo3_0」をタグ付けしてInstagramへ投稿した画像を、展示作家がランダムに選択し、また、展示会場の鑑賞者の皆さまにも参加いただきスマホプリンター用紙にプリントして壁面に貼り付けることで、コラージュ作品を製作します。コラージュ作品の実物は会期後に破壊し、その様子をNFTの世界に保存します。
2010年代以降、スマートフォンの普及とともにサービスの開発が進みました。iPhoneの発売もスマートフォンの普及に拍車をかけ、2000年代後半に日本に上陸していたTwitterやFacebook、2010年にリリースされたInstagramもユーザーが爆発的に増加しました。タグ付けは、Instagramにおいて写真や動画を投稿する際に、キーワードを紐付けすることで、画像の情報共有を促進する機能です。
このように、コラージュ作品に関しては、2000年代以降の文化の象徴であるSNS固有の機能を使用しながらも、作家の身体性や鑑賞者の共同制作と組み合わせて展示会場のコミュニケーションによって成立する表現を提示します。
展示会期中に、コラージュ作品をNFT化し、抽選でコラージュ作品の参加者に還元します。
NFTとは「Non-Fungible Token(ノン-ファンジャブル トークン)」の頭文字を取ったもので、日本語で「非代替性トークン」という意味です。2010年代以降に成立したデジタル資産の所有者、希少性を担保する技術です。
異なる文脈の作品を同じ空間に置くことで、写真表現について考える場になればと思います。
姫野顕司、野々山裕樹、Nigel Wong