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English ソニーイメージングギャラリー 銀座

さの りえ/孫 佳奈/廣田 耕平 映像作品展 I hope it reaches you –3つの物語–

 ソニーイメージングギャラリーの3回目の映像作品展では、人の「想い」がテーマとなっている3つの物語をご覧いただきます。

 2011年3月11日の東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県釜石市で、苦難を乗り越えて生きる人々の姿を見つめたさの りえさん。あの時もっとできることはなかったかと今も自問自答しながら生きる人。一度は釜石を離れたものの故郷のために少しずつでも何かができるのではないかとじっくり向き合う人。都会の喧騒に自らを見失いかけ釜石に戻ったことで癒され自分を取り戻した人。そして、震災時にはまだ幼かったけれど今は成長した若者や子供たち。この物語は登場する一人一人の、あるいは釜石の物語でありながら、本当は被災地のたくさんの人々、たくさんの村や町の物語なのかも知れません。

 2つ目は中国から日本へ留学し写真・映像を学ぶ孫 佳奈さんの作品です。彼女は東京のとある町で80年以上も続く手作りの豆腐屋さんとして街の人々に親しまれているお婆さんに出会います。ずっと昔に豆腐は中国から日本に伝えられたことを教えてくれたお婆さんの背中に故郷の祖母の姿を思い浮かべる孫さん。近くて遠い2つの国が、豆腐と二人の「おばあさん」によってつながります。

 廣田耕平さんの作品はいくつもの短編映画祭で上映されてきました。舞台は老舗の呉服店。そこでとある男女がピアノの調律をきっかけに出会います。どこかクラシックな雰囲気が漂い、ロマンチックな予感がするこの舞台設定の下、廣田さんが恋の物語を15分ですとんと落とし込みます。人と人との出会いでは、意外なことによってスイッチが入り、そして時にはその場では失敗であったことが、意図せずに「運命の選択」がうまくいく結果を導いてくれているのかも知れません。

 限られた時間の短編動画で伝えられることはそれほどたくさんのことではないかも知れませんが、登場する人たちが演技の道を行く人であってもごく普通の生活者であっても、言葉や音、表情やしぐさが丹念に紡がれることで、少しだけれども大切なことを思い出させてくれたり、気づかせてくれるのでしょう。

 この3つの想いがあなたに届きますように。

【予告編動画】
廣田耕平

さの りえ プロフィール

 岩手県盛岡市で育つ。その後、発展途上国、アメリカの貧困街、津波被災地で過ごし、生きる力を鍛える。アマゾンでピラニアを食べたこともある。

 帰国後、釜石市復興支援員の広報になり、仮設住宅に住みながら被災地の取材と発信を始める。同時に、司会業・ラジオパーソナリティとしての仕事も始める。2020年、当初”復興五輪”と呼ばれた東京五輪開催に際し、「被災地の人の姿を世界に伝えたい」と動画制作を始める。

 夢はアラスカに滞在して野生のシロクマを撮る事。最終的に目指すのは、Sustainable Worldの実現に向けて、立場を超えた人々をクリエイティブな手段でつなぐこと。あるいは“Peace Producer”になること。

映像作品タイトル:
Legacy of Resilience –The ocean made us stronger

 東北の被災地の一つ、岩手県釜石市には、訪れる人の心に “希望”を抱かせるような力があります。津波の被害を受け耐えがたい悲しみを味わいながらも、自分よりも誰かの為に、あるいは街の未来の為に出来る事をしよう、と行動し続けてきた人々が多くいるからです。前を向くことを決意した時の、彼らの表情は本当に美しく、私自身にも生きる力を与えてくれました。

 今回の展示作品では、釜石の復興に大きな役割を担っている4人にインタビューをしています。共通して尋ねたのは「体験した困難」「それを乗り越えるためにしてきたこと」「そうして得たもの」という3つの質問です。震災から約12年が経った今、4人の人生で各々 “復興”が進んできたことをお伝えできたら幸いです。

 また、映像内では釜石が誇る海や山などの自然風景を多く挿入し、被写体には車や船などに乗りながら話をして貰いました。釜石を訪れた事がない方も、共に街を巡りながら人々の言葉に耳を傾けているような感覚で、作品をお楽しみください。

さの りえ
作品アーカイブ鑑賞
Legacy of Resilience -The ocean made us stronger

さの りえ ギャラリートーク第1回
ゲスト:釜石市の皆さん
(閉館後に無観客で実施)

さの りえ ギャラリートーク第2回(前編)
ゲスト:ハービー・山口さん(写真家)
井上浩輝さん(写真家)

(閉館後に無観客で実施)

さの りえ ギャラリートーク第2回(後編)
ゲスト:ハービー・山口さん(写真家)
井上浩輝さん(写真家)

(閉館後に無観客で実施)

孫 佳奈(そん かな)プロフィール

中国浙江省 生まれ
2023年日本写真芸術専門学校 総合写真研究ゼミ卒業予定
2023年東京造形大学に編入学予定
サイアノタイプを用いた作品や、ドキュメンタリーの写真作品などを制作

活動歴:
  • 2019 年 WPPI (FIRST HALF)国際フォトコンテストで銀賞受賞
  • 2022 年 VOGUE WEB に『OOMUROYAMA』単写真入選
  • VOGUE WEB に『HOME TOWN』単写真入選
  • 総合写真研究ゼミ展「いつかの君へ」(目黒区⺠ギャラリー)
  • 第47回JPS 展ヤングアイ 日本写真家協会会⻑賞受賞
    (5月東京都写真美術館で展示 6月京都美術館別館で展示)
  • 写真展 「此方」 ギャラリーヨクト(東京都)
  • 第38回東川町国際写真フェスティバル屋外写真展出品ー「Slough」
  • GAKKOTEN2022レビュー 今岡昌子·選
  • T3 PHOTO FESTIVAL STUDENT PROJECT
  • T3 Photo Market(展示作品「Slough」)
  • 浅草下町文化祭グループ写真展出品ー「草加屋」
  • 4KDO10 SOFVI EXHIBITION サイアノタイプ作品出品

映像作品タイトル:
此方

豊島区東⻑崎の商店街近くの道路沿いに昔ながらの豆腐屋さんがあります。屋号を「尾張屋」 さんといいます。朝4時から作られた豆腐や厚揚げは大豆の味が濃厚で、毎日たくさんの方が買いにいらっしゃいます。80年以上も営む老舗豆腐店で、店を担っておられるのは四代目の栢沼 (かやぬま)敏子さんです。お店でゆっくり歩いてる栢沼さんの後ろ姿を見た時、私のお祖母ちゃんのことを思い出しました。
なんとなく縁があるという気がして、次の日に栢沼さんに声をかけました。栢沼さんに今の中国で手作りの豆腐屋はまだあるのって聞かれました。調べてみると手作りの豆腐屋がど んどん無くなっていて、機械化になっているということを知りました。
“豆腐はね、中国から日本に来たよ”私にそう教えてくれました。ある文化が機械化の風潮によって、徐々に姿を消していると感じました。映像を撮ることで 栢沼敏子さんにとって想い出が沢山な「尾張屋」さんを、そして自分の母国の文化を守りたいと考えています。

廣田 耕平(ひろた こうへい)プロフィール

日本大学芸術学部映画学科卒業。在学中、脚本・監督した自主映画「さえずり」がFOXムービープレミアム短編映画祭にて優秀賞を受賞。卒業後は、CM・MV・ドラマや映画など数多くの現場で演出部・制作部を経験する。2018 年から映像制作会社に勤務し、ディレクターを担当。2020 年以降は自ら撮影・編集も行うフリーのディレクターとして活動中。映像制作チーム 空心彩 所属。

今作の短編映画「ラの♯に恋をして」は国内外20ヶ所の映画祭にて入選入賞。

  • 東京国際映画祭 Amazon Prime テイクワン賞 ファイナリスト
  • クレルモン=フェラン国際短編映画祭 Short Film Market Picks選出
  • ニューヨーク市短編映画祭 最優秀コメディ賞
  • キャンベラ短編映画祭 最優秀監督賞
  • バンクーバーアジアン映画祭 入選
  • フォイル映画祭 入選

映像作品タイトル:
ラの♯に恋をして

人には他人に見られたくない瞬間がある

しかしそんな瞬間にその人をとても愛おしく感じることもある

恋に落ちるというのは、そんな刹那なのかもしれない

-あらすじ-

調律師のアキオは老舗呉服店を営む西室家へ訪れていた。
居間で調律をしていると西室家長女のテルがお茶を出しに現れる。
しかしテルはアキオの前でふいにオナラをしてしまう。
凍りつく空気。恥ずかしさを隠しながらその場を離れるテル。
そしてアキオはなぜか彼女に恋をしてしまう……。