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English ソニーイメージングギャラリー 銀座

尾﨑 たまき 作品展 漁師犬タロウ津波のあとより...

岩手県田野畑村でミズダコ漁を営む漁師の佐々木公哉さん(愛称:キンちゃん)に初めてお会いしたのは2014年。 東日本大震災後、三陸での漁が復活する姿をカメラに収めようと、さまざまな魚種の漁師さんを訪ね歩き、船に同乗させてもらいました。
キンちゃんのミズダコ漁は長引く不漁に加え、燃料費も高騰したことで、船を出すことさえ厳しい状態が続いていました。頭を抱えながら悩むキンちゃんを笑顔にしてくれていたのは愛犬タロウ。タロウは震災で津波に流されながら、9日目にして自力で家に帰還した奇跡のワンコです。
タロウには”漁師犬”という、もうひとつの顔があります。キンちゃんと一緒に船に乗り、餌の魚を横取りしようと空から現れるカモメを追い払う仕事です。いやはや普通の犬ではありません。

「大漁シーンが撮れたら、タロウくんの写真絵本を作りましょう」そう話したときのキンちゃんの嬉しそうな表情がいまでも脳裏に浮かびます。
それから何年経ってもタコの不漁は続きました。タロウも少しずつ年を重ね、船に乗ることさえままならなくなり、2019年19歳で天寿を全うしました。

(キンちゃんとの約束、守れなかったな)

それからさらに3年が経ち、キンちゃんが病に倒れたとの一報を受けました。
「何やってたんだ!私」と自分の尻を叩き、急ピッチで写真絵本の完成に向け動き始めました。残念ながら大漁シーンには出会えませんでしたが、出版社からゴーサインをもらうとすぐにキンちゃんに報告しました。
 本の完成を“生きる目標”と言って楽しみにしてくれていたキンちゃんは2023年、完成を待たずして帰らぬ人となりました。校正刷りだけでも見て頂けたことが何よりの救いです。
この場をお借りしてご冥福をお祈り申し上げます。

「漁師犬タロウの存在を知ることで、動物を愛する心優しい人間になってほしい」というキンちゃんの願いが、この写真展を通して、多くのみなさまに伝わることを心から願っています。

尾﨑たまき

尾﨑 たまき(おざき たまき)プロフィール

熊本市出身、山梨県在住。19歳のときダイビングを始め、海の持つ力強さや生きものたちの健気な生きざまに感動。撮影スタジオで広告写真を撮影する傍ら、独学で水中写真に取り組む。本格的に水中写真を学ぶため上京、水中写真家・中村征夫氏のもと研鑽を積む。独立後は水中のみならず、水俣、三陸、山梨などで、人びとの暮らしやそこに生きるいきものたちなど、人と生きものとの関わりをテーマに記録している。

Exhibition

  • 「海の色ものがたり」新宿ペンタックスフォーラム
  • 「うみかぜ日記 あまくさ島のたからもの」新宿ペンタックスフォーラム
  • 「いまも水俣に生きる」 新宿エプサイト ほか
  • 「海への想いー三陸に生きる・水俣に生きるー」盛岡市 百貨店“Nanak”
  • 「海と生きるー水俣から三陸へー」調布市文化会館たづくり
  • 「水俣物語」キヤノンギャラリー銀座、福岡、仙台
  • 「お家に、帰ろうー殺処分ゼロへの願いー」富士フォトギャラリー新宿
  • 「姫竜が織りなす愛の物語」リコーイメージングスクエア新宿
  • 「笑顔の海ーみなまたー」水俣市立水俣病資料館

Books

  • 「うみかぜ日記——あまくさ島のたからもの」(三五館)
  • 「お家に、帰ろうー殺処分ゼロへの願いー」(自由国民社)
  • 「みな また、よみがえる」,「水俣物語」,「フシギなさかな—ヒメタツのひみつ—」「漁師犬タロウ」「みなまたの歌うたい-今日も元気に船を漕ぐ-」(新日本出版社)

Media

  • TV番組「素敵な宇宙船地球号」(テレビ朝日)
  • 「女子才彩」(BS-TBS)
  • 「The Photographers2」(BS朝日)