1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ、東京育ち。外交官の父の転勤で少年時代をオタワ(カナダ)、ロンドンでも暮らす。早稲田大学第一文学部卒。中日新聞社に記者職で入り、カメラマン職に転身した後、東京新聞写真部でアフガン紛争の撮影・取材を経験。2005年よりフリーとなり、写真撮影と記事執筆の両方をこなす。そのころから犬を飼い始め、犬の撮影を得意分野の一つとする。愛犬雑誌での写真・記事の掲載多数。2011年に愛犬とともに長野県・八ヶ岳山麓に移住(2022年より同県浅間山麓に定住)。アイメイトの撮影・取材などを通じた「人と動物の絆」がライフワーク。日本写真家協会(JPS)正会員。
主な撮影・執筆媒体、出版物、写真展
- WAN(緑書房)フォトエッセイ連載「Dog Snapshot」
- 愛犬の友(誠文堂新光社)フォトエッセイ「リタイア犬日記」
- バンガードインターナショナルフーズ(web連載)「リタイア犬日記」
- POCHI フォトエッセイ(web連載)「Dog Snapshot R」
- ニューズウィーク日本版 フォトエッセイ「日本横断徒歩の旅」
- 写真集「Berlin + Tokyo」(jovis)
- 写真展「Berlin + Tokyo」(ベルリン日独センター)
- パネル展「盲導犬 アイメイトって知ってる?」ココネリホール
「リタイア犬」とは、アイメイト(盲導犬)を引退して奉仕家庭に引き取られた犬たちのことです。本写真展の主人公「マルコ」は、そんなリタイア犬の一頭です。10歳でアイメイトとしての役目を終え、2019年9月から2023年10月に亡くなるまで、我が家で家庭犬として過ごしました。最初の出会いでマルコの優しい瞳を見た瞬間、私は写真家として、シャッターを切らずにはいられませんでした。以来、マルコと過ごした4年間の日々を、毎日欠かさず、日記のように写真に収めました。その集大成が本写真展です。
リタイア犬としての日々の後半、マルコは病気で脚を1本失いました。それでも奇跡的な生命力で、我が家がある信州の高原を3本の脚で駆け回りました。底しれず優しく、そして強い犬でした。そんなマルコが私たち夫婦に向けてくれた愛は、広く普遍的な愛でもありました。
「アイメイト」は、日本に11ある盲導犬育成団体のうち、「公益財団法人 アイメイト協会」出身の盲導犬の独自の呼称です。実際のアイメイトの働きぶりは、「盲導犬」という言葉から連想される「盲人を導く犬」とは違います。アイ=Iには「私」「目」「愛」の3つの意味が込められ、Mateは「仲間」という意味です。「私の目となる愛に満ちた仲間」であるアイメイトは、使用者である視覚障害者の心の拠り所でもあるのです。マルコは、そんな愛情を、私たちにも、散歩で出会う人や犬にも、別け隔てなく与えた「アイメイト」そのものでした。それゆえに、私はこの「リタイア犬日記」を単なる「うちの子物語」とせずに、「愛のおすそ分け」として、皆様にもお届けしたいと強く思ったのです。
本写真展に先立って、この「リタイア犬日記」を写真絵本形式でまとめた作品が、大空出版「第5回 日本写真絵本大賞」で、毎日小学生新聞賞をいただきました。マルコの生き様が認められたのだと、大変嬉しく、そして誇らしく思います。受賞作を動画にした作品も会場で上映されていますので、そちらもぜひ、ご高覧ください。
内村コースケ