1974年東京都葛飾区生まれ。
多摩美術大学美術学部二部映像コース卒業。
さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。
公益社団法人 日本写真家協会会員。
主な展示
- 2009年
- 「甦る五重塔 身延山久遠寺」キヤノンギャラリー銀座など
- 2010年
- 「Beijingscape」エプサイトギャラリー
- 2012年
- 「感應の霊峰 七面山」コニカミノルタプラザ
- 2016年
- 「山梨県早川町 日本一小さな町の写真館」新宿ニコンサロンなど
- 2017年
- 「たけたのひと、たけたのいろ。」TAKETA ART CULTURE
- 2018年
- 「しましま」GLOCAL CAFE IKEBUKURO
- 2020年
- 「明日COLOR」ルーニィ247ファインアーツ
- 2020年
- 「#shibuyacrossing」ソニーイメージングギャラリー
- 2021年
- 「まちまち」ケンコートキナーギャラリー
- 2022年
- 「煩悩の欠片を燃やして菩提の山へ走れ」ナインギャラリー
- 2022年
- 「それは光のしわざ」喫茶ランドリー本店
写真集・著書
- 『甦る五重塔 身延山久遠寺』(平凡社)
- 『感應の霊峰 七面山』(平凡社)
- 『山梨県早川町 日本一小さな町の写真館』(平凡社)
- 『いい写真を撮る100の方法』(玄光社)
南アルプスに抱かれ、広い町域の96%を森林に覆われた山梨県早川町は、日本でもっとも人口の少ない町でもある(2024年10月1日時点で876人)。僕は縁あって10年以上この町に通い、これまでおよそ850人の町民を撮影している。そこで強く感じるのは、老若男女問わず、早川町の人々はみな肌のつやがよいことだ。とくにおじいさんおばあさんは実年齢よりずっと若く見える。その理由だが、僕は水にあると思う。
早川町には主な集落ごとに水源があり、その数は22か所。住民たちが自らの手で維持管理している。蛇口から出てくるのは、南アルプスの“ほぼ”天然水だ。湧水もあちこちの山裾にあり、遠くから汲みにくる人の姿も見かける。それらの水はおよそ20年前、急峻な山々に降った雨。木から土、そして岩をくぐり抜けた清冽な水が、人々の身体へと沁み入っていく。
町内から甲府盆地の高校へ通っていた人が、学校の水道水が口に合わず、自宅から水を持参していたという話を聞いたことがある。甲府盆地は全国屈指の晴天率を誇るが、山ひとつ越えた早川町の年間降水量はその倍近くあり、豪雨や台風による災害も多い。一方でそれは恵みの雨として、動植物たちを育む。獣や魚を獲り、畑を耕し、余れば近所へお裾分け。コンビニもスーパーもないこの町では、自給自足に近い暮らしもとりたてて珍しくはない。それとは対照的にリニア中央新幹線の工事も進むが、時速500kmでリニアが駆け抜けるようになっても、それは変わらないように思う。
山とともに生きることは、雨とともに生きること。今も雨乞いの風習が残る集落では、日照りが続くと太鼓や鍋を叩き、空へと祈りを捧ぐ。そして降る雨は森へと消え、ひとすじの地維となってふたたび湧くときを待つ。