1985年、茨城県土浦市生まれ。言語聴覚士・公認心理士として病院で勤務するかたわらで人・自然との対話をテーマに写真・映像による作品を制作している。
作品歴
- 2024年 5月
- 写真の声を聴く「Contradiction」(WEB展示)
- 2024年 2月
- 寄居町シティプロモーション動画コンテスト優秀賞「YORII SUMMER」
- 2021年 7月
- たまねぎをむく展「宇宙の子」(gallery LE DECO)
- 2019年11月
- フォトモンタージュ作品「羽化」(72Gallery)
- 2019年 7月
- 写真集「日々のあわ、重なる軌跡」
映像作品タイトル:
三月の雪
雪が降ると静けさを感じる。これは音の振動が雪の隙間に吸収されるからだ。私はこの静けさが好きだ。
昨今、雪が降らなくなったと感じる。2023年末から2024年初頭の冬は暖冬だった。短期的な大雪こそあれ、北日本側の降雪量は平年よりも少なく、桜の開花は全国的に遅れた。季節のあり様が変化していることを身近に感じるようになった。
気象庁のシナリオでは、2076年から2095年には日本の大半の地域で、年最深積雪と降雪量は大きく減少すると考えられている。その減少率は20世紀末と比べて7割にも及ぶ。
本作品では不可逆である自然の営みを逆再生にすることで、この美しい現象を未来に残したいという願いを込めた。
映像:4分11秒
音楽:MUUA「sphere」
制作:2024年3月
風から生まれた
カメラを持って外に出たとき、私が心惹かれたものは海原に揺れる月の光や、風にそよぐ草花、川のせせらぎの音や、木漏れ日で生じる陰影だった。それらは天候や生き物との関係によって姿形や音を変え、常に賑やかで、ゆるやかで、自由だった。絶妙なバランスの世界。お互いがお互いを見て、聞いて、呼応している。変化し循環する様を静かに眺めているうちに、私はその中に溶けていくような感覚があった。
私はこれを作品にしたいと思った。
量子力学ではこの感覚を「ゆらぎ」と呼ぶそうだ。光のゆらめきも、風の強弱も、私たちの鼓動や呼吸も「ゆらぎ」の性質を持っている。こうしたゆらぎの性質に脳が呼応したとき、私たちは心地よさを感じるのだという。
そして、私たちが住む宇宙も、その起源にはそよ風のような「ゆらぎ」があり、そこから宇宙が生まれたと考えられている。
同じ性質を共有する私たちは、風から生まれた宇宙の子どもだと言えるかもしれない。
映像:5分51秒
音楽:MUUA「shape」
制作:2025年
近年は毎年のように「今年の夏は今までにない暑さですね」という言葉を交わすようになりました。そして大雨の激しさが極端になる等、様々な形で私たちの生活にも変わりゆく気候の影響を感じるようになっています。
本来は南の海に棲む魚が関東の海でも見られるようになったり、さらに南の海ではサンゴの白化現象が広がったりする等、生き物たちの暮らしにも気候の変化による影響が現れています。
これらは日本だけで見られるのではなく、世界のあちこちの海や山や森でたくさんの生き物が環境の変化によって種の危機に直面している、棲むところを変えなければならなくなっている、と言われています。
また、日本では札幌のような大都市にもヒグマが現れたと報じられ、様々な地方でイノシシやシカの姿が場所によっては人里でしばしば見られるようになる等、人と生き物との関係性にもお互いの生活が影響を及ぼし合うようなニュースも目にします。
大規模な森林伐採や宅地開発、工場や高速道路の建設等、人が生き物の暮らす場所を壊してしまう事が今も世界のどこかで絶えず行われています。
人や生き物はこれからもこの地球で生き続けていくことができるのでしょうか。
わたしたち人は生き物と互いに影響を及ぼし合い過ぎないようなやり方を見つけ生み出し、この地球で共存し続けていくことができるのでしょうか。
身近なところで起きていること。
そして、今見えていないことを想像すること。
もしわたしが何かできるなら。