第14回公募セレクション作品 宮城 ヨシ子 作品展 Photo Orchestra
- 会期
- 2025年3月28日(金)~4月10日(木) 11:00~19:00
デジタル時代の申し子、それが86歳になる写真家マエストロ宮城ヨシ子さんです。
写真がフィルムだった頃の写真家は職人でした。露出やシャッタースピード、構図を素早く判断してシャッターを切っていた。そのためには技術の修練が必要だった。それが、技術の進歩によって誰でも写真が撮れるようになった。特にデジタルカメラになってから写真を撮ることの技術負担が急速に大きく軽減することで失敗写真というものがほとんどなくなった。ヨシ子さんは、すべての写真をPモードで撮ってきた。露出、シャッタースピード、感度などのテクニカルな事は全てカメラに任せ、自分の好きな瞬間にだけ目を向けてシャッターを切ってきた。
ヨシ子さんがシャッターを切る瞬間は、アンリ・カルティエ・プレッソの写真の決定的瞬間とは異なっている。プレッソの決定的瞬間は水面に足先がつくような、特異な時間や空間を切り取るような瞬間だが、ヨシ子さんの瞬間は違う。カメラを手に取りながら心に広がっている色が、赤に青に緑に利休鼠色へとクルクルと巡る。その色が変わった瞬間、広がった瞬間、彼女の心が動いた瞬間、それらが彼女の決定的瞬間。世界の時を止めるような瞬間ではない。被写体も変わった物、目立つ物、驚くような物、見たことのない瞬間などではなく、その時のヨシ子に特別なものであればいい。そこにある石も、その時の彼女が見ている色によって写真へと取り込まれていく。
今は亡き写真の師匠である勇崎哲史の言葉を借りて言えば、写真家はファインダーを覗いた時、これまで身につけてきた構図や設定を瞬間的に考え、経験で学んだ構図や設定で写真を撮る職人の仕事をしてきたが、ヨシ子さんは設定はカメラ任せ、構図は考えずに心のままに、見たままに子供の好奇心のようにシャッターを切っていく。テクニックや図り事に依存せず見る人の心を動かすことができる、まるで児童画のようである。
Producer 永山 直樹
宮城 ヨシ子(みやぎ よしこ)プロフィール

- 1938年
- 伊是名村で生まれる
- 2007年
- かりゆし長寿大学の写真講座を受講する
- 2012年
- 光画文化研究所で写真を学び始める
個展
- 2017年10月
- 『Frame out』. tomari(とまり)
- 2024年10月
- 『パステルeye』 平敷兼七ギャラリー
- 2025年2月
- 『フォトの森』 Cafe Rat & Sheep
写真集
- 2017年10月
- 『宮城ヨシ子写真集 Frame out.』 ボーダーインク社
グループ展
- 2013年3月
- 『フラグメンツ3 翼たちの断章 こころの落描き』 県民ギャラリー
- 2014年8月
- 『フラグメンツ4 翼たちの断章 こころの落描きII』 県民ギャラリー
- 2016年5月
- 『写真個展集合体 フラグメンツ5 こころの落描き3』 県民ギャラリー
- 2018年5月
- 『写真個展集合体 フラグメンツ6 こころの落描き4』 県民ギャラリー
- 2022年5月
- 『勇崎哲史門下生追悼展 こころの落描き』 県民ギャラリー
- 2023年7月
- 『勇崎哲史門下生写真展2023 崖っぷちのヒンプン』 県民ギャラリー
- 2024年6月
- 『勇崎哲史門下生写真展2024 迷宮~さがしにいこう』県民ギャラリー
「写真とは何ぞや」
そんな答えのない問いを問い続けながら、首から愛機を吊り下げて玄関を出ていく。そんな私の写真は家から半径3キロ。
答えのない問いをぼんやりと考えながら歩みを進める。
道が光り、木々のさざめきが視界の中を流れていく。
心に色があるなら歩みを進めながら、色んな色が心を巡る。
歩みを進めていると、私をギョッとさせ、ハッとさせるもの、色が入り込んでくる。
それは、何?
心が躍る。
その時に私はシャッターを切ってホッとする。
私は何を撮ったのだろう、何で撮ったのだろう、わかるようで、わからない。
心の動くまま、心の色が変わる瞬間にギョッとして、ハッとして、シャッターを切ってホッとしてきたのが私の写真。
オーケストラにはヴァイオリンにオーボエ、ティンパニと形も音色も違う楽器がある。それぞれが個性的。一見バラバラのようにみえるのが、指揮者の指揮の元、それぞれの音色、個性がまとまり、一つの世界を作り上げシンフォニーを奏でることができる。
そう、私は指揮者で写真は楽器。シャッターがコンタクトとなり、それぞれの個性が私の指揮のもとで世界のシンフォニーを奏でる。
日常の光景を切り取る中で、運命な出会い、田園を飛ぶ雲雀の声、見過ごしている、気づかない光景を私の心の色で切り取り、新たな新世界を奏でる。
本日は私、写真家マエストロ、宮城ヨシ子さんの個展に足を運んでいただきありがとうございます。
私の指揮するPhoto Orchestraのシンフォニーをお楽しみください。
宮城 ヨシ子