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ソニーの最新カメラ技術が支える広和株式会社の水中ロボット革命:高画質・高性能ROVの進化

CASE STUDY

広和株式会社は、1952年に創業し、様々な分野で事業を展開しています。その中でも「マリンシステム部」は、1985年に創業者のビジョンをもとに水中ロボット(以下ROV(Remotely Operated Vehicle)と表記)の自社開発を目的として設立されました。
当初、人工漁礁部門において魚の育成状況はダイバーが確認していましたが、深海や長時間の潜水に伴うダイバーへの負担が課題となりました。これを解決するため、ROVの開発が始まったのです。以来、同社はROVの開発を重ねてきました。その結果、高い技術力と独創的な設計思想を持ち続け、海洋研究を支援する国の機関からの依頼に応える製品を提供し、業界内で重要な地位を確立しています。これまで広和株式会社はカメラモジュールにFCBシリーズを採用しており、今回は最新モデル「FCB-EV9520L」の導入について評価を伺いました。

■広和株式会社 取締役 広川工場長 阪 幸宏 氏   ■マリンシステム部 技術グループ 次長 上村 宇之 氏

FCBシリーズを選んだ理由

上村氏

上村氏当時、単焦点のカメラを長い間使っていましたが、ズームカメラの要望を多く受けていました。ROVの前面がアクリルのドームになっており、ズームを使用するとフォーカスが合わないという問題がありました。そのため、アクリルドーム下でのズームカメラの移行が難しかったのですが、その技術を我々の中で確立することに成功しました。同時期にFCBシリーズが登場し、切り替えることができました。

画質向上「FCB-H11」導入

ハイビジョンからフルHDに移行し画質が向上しましたが、一番の理由はFCBシリーズのFCB-IX10Aモデルを長く使用していたことです。FCB-H11はFCB-IX10Aとほとんど同じ大きさであったため、スムーズに導入できました。また、ROVはケーブルを何百メートルも先に伸ばして使用するため、映像の伝送が課題でした。FCB-H11はHD-SDI規格を使用しており、従来の規格と比べても遜色なく映像を伝送できたため、切り替えのポイントとなりました。

大深海で使用されるFCB

深海は水深200m以深を指し、1000m、2000mを大深海と呼ぶことが多いです。日本の国の機関が7000mまで到達できるROVを所有しており、我々のカメラもその深度で使用されています。

カメラの進化と組み込みの苦労

FCB-H11からFCB-EV7100に移行する際、カメラのサイズが1回り大きくなりました。ドーム内でカメラを動かす際、カメラが大きくなると当たる部分が出てくるため、パンする機構を変更して対応しました。元々ベルトで駆動していた部分を歯車駆動に変更し、当たっている部分を別の位置に移動させるなどの工夫が必要でした。

最新モデル「FCB-EV9520L」について

上村氏

上村氏FCB-EV9520Lはこれまで使用していたFCB-EV7520と大きさが変わらず、カメラの変更もスムーズに行えました。また、映像のコントラストが非常に良くなり、画質が向上した点が採用を決めた大きな理由です。

カラーカメラブロック
FCB-EV9520L

ズーム機能を活用

上村氏

上村氏一般にカメラのズーム機能の主目的は遠方のものを拡大して見ることですが、水中では光の関係で遠方を見ることはあまりありません。我々はズーム機能を近くの生物観察や構造物点検における微細な状況確認に役立てています。例えばクラゲやサンゴの触手や構造物の傷の状況を拡大して鮮明に撮る等です。その際、高画質を維持しながらズームが出来ることは非常に役立ちます。

ROVのノウハウについて 水中ドームと組み合わせたカメラシステム

水中ドームの設計は、レンズ設計と同じように光学的な知識やノウハウを必要とします。弊社では、ズーム時にもきちんとピントを合わせられるよう、長年培ってきた知見を投入しています。先述のパン/チルト機構の改良と共に、水中ドーム設計の進化はROV自体の小型化に大きく寄与しています。いずれも水中のまたとない瞬間を撮影するために、カメラのズーム機能、高画質などの特性を最大限に引き出せるよう様々な工夫を重ねてきた結果であり、効率的で信頼性の高い水中作業を可能にしたと考えております。

水中ドームと組み合わせたカメラシステム

ROVのノウハウについて あえてマニュアル操作

上村氏

上村氏 一般に多くの用途ではオートフォーカス(AF)機能を使用されると思いますが、弊社では確実に対象物にピントを合わせたいので、敢えてマニュアルフォーカス機能を使っています。水中では観察したい対象物の周りに多くの浮遊物やマリンスノーが存在し、カメラのオートフォーカス機能ではそれらにピントが合ってしまうためです。
フォーカスやズームなどFCBの細かい操作には、VISCA通信プロトコルが非常に役立っています。遠隔で映像を見ながらカメラを操作するのに大変便利です。

今後カメラに期待すること

上村氏

上村氏「小型化」が非常に重要です。FCB-H11から現在のモデルへと進化する中で、高性能化になり、小型化という部分がトレードオフになったのかと感じています。ソニーの技術で高性能ながらさらに小型化されることを期待しています。
ズーム機能については、光学ズームが10倍から30倍に進化した一方で、ズーム時の最至近撮影距離が長くなりました。水中ではライトが光の頼りですので、見える範囲は約2m以内です。ズーム機能を用いて近くの被写体を鮮明に拡大して見るためにも、最至近撮影距離がもう少し短くなると良いと思います。この改良により、弊社としてはズーム機能を最大限に活かすことが出来ます。

他社のカメラとの比較

阪氏

阪氏ズーム機能について具体例を挙げると、様々なズーム倍率においてフォーカスが正確に合わせられるかどうかを検証しました。その点で、ソニーのカメラが最も優れていました。また、ズームの動きの滑らかさも他社製品と比べて非常に滑らかです。例えば、小さなナットや部品の確認を行う際にも、ズームした際にピントがしっかりと合うことが確認できました。高品質な画像が得られる点で、ソニーのカメラの性能の高さを実感しました。

国内販売・国内調達にこだわる理由

上村氏

上村氏弊社のROVは基本的に海外には販売していません。その最大の理由はお客様の重要なミッションに使われる「海の機械」はメンテナンスが重要なポイントを占め、現場で故障した際に迅速にサポートすることが求められるからです。海の現場は非常に厳しい条件下で作業が行われ、工期が決まっています。自然の中の海では大潮・小潮が2週間単位で変わり、潮が止まる時間は1ヶ月のうち限られています。例えば、ROVが壊れて調査ができなくなると、次の調査は2週間後、天候にも左右されるため、場合によっては1ヶ月先になることもあります。これではお客様にとって致命的な問題に成り得るため、迅速に対応できることが非常に重要です。
同様に、現場で故障したお客様が弊社の工場に来られて「困っているので直してほしい」と依頼されることがあります。そのため、カメラを含むROVの構成部材は極力国内調達に拘り、迅速に修理および交換対応できる体制を整えています。ソニーのFCBカメラが国内で入手できることが非常に助かっています。これが海外であれば、故障した場合に「直せません」となるケースがあり、重要ミッションを抱えたお客様の期待に応えることが難しくなります。

水中カメラとして重要なこと

上村氏

上村氏水中カメラには三つの重要な要素があります。「小型であること」、「広角であること」、「高感度であること」です。
まず、「小型化」は先述のようにROV全体の大きさに影響するので非常に重要です。かつてのFCB-H11と比べて現在のモデルは大きくなり、その分FCBは高性能です。出来ればもう少し小型化できると弊社のROV設計に大きな利点をもたらします。
次に「広角」ですが、オペレーターが映像を見ながら操作する際、カメラの視野は広い方がROVの状態が把握しやすくなります。実際、弊社のお客様から広角の要望もありますので、現在はFCBの前面に弊社オリジナルのワイドコンバージョンレンズを付けて使用しています。
最後に「高感度」です。近年のFCBはソニーのセンサー技術の進化に伴いより高感度ですので、以前の機種と比べ大幅に鮮明な映像を撮影できます。太陽光の届きにくい水中において、追加照明が少なくてもノイズを抑えた明るい映像が得られるので、高感度は大きなメリットになります。ROVに搭載されている照明を強くして光量を稼ぐことも不可能ではないですが、マリンスノーだけが眩しく撮影されるなど、映像品位の観点で望ましくない場合も多いのです。
このように、弊社のROV技術は、弊社の長年培ってきた努力と、ソニーの進化し続けるカメラ技術によって成り立っています。今後も、弊社のような水中用途にも活用できるカメラを開発していただくことを期待しています。

左から 株式会社レスター 上玉利氏、ソニー株式会社 関口氏、広和株式会社 上村氏、
広和株式会社 阪氏、ソニー株式会社 和田氏、前田氏、岩島氏

広和株式会社 https://www.kwk.co.jp/
*この記事は2024年11月時点のものです。

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